三次審査、本番。

私──鼓朱那は、審査員席に座ってメンバー表を改めて確認していた。

今回最初に披露するのは、鷹城葵チームの『アンバーグラス』。

注目メンバーが集結した、話題性申し分なしの実力派チームだ。

まず目を引くのは、やはり峰間京。

前世無し、全くの無名からのスタートでありながら、一次、二次とずっと上位をキープしてきた、この番組のダークホースというべき存在。

並外れた表現力に加え、ビジュアル、ボーカル、ダンス全てにおいて参加者トップクラスの実力を誇るオールラウンダーだ。

当然、人気が出ないはずがなく。

EP.1放送時には、SNS上で彼の切り抜き動画が爆速で拡散。

『沼落ち』『人生狂わされた』『絶対好きになっちゃいけなさそう』なんてあちこちで騒がれていたっけ。

ただ──最近、女絡みが多いとSNSでプチ炎上していたのがマイナスポイント。

遊びたい年頃なのは分かるけど、この場に立っている以上、自分が商品であるという自覚は持ってもらわないとね。

次いで視線を移したのは、榛名千歳。

EP.2の放送で、男子とは思えないほどの可愛さでSNSを沸騰させた彼。

その中毒性のあるハイトーンボイス、天使のような中性的なビジュアルで、男女問わず多くのファンを獲得している実力者だ。

ただ、ひとつ懸念を挙げるとするならば──彼は、いつもどこか自分の殻を破れていないようなところがある。

一次審査は可愛さの衝撃でその凡庸さをカバーできていたけれど、審査を重ねるにつれて、その表現の空虚さが浮き彫りになっている。毎回及第点は取るけれど、それ以上は無い。それが彼の最大の長所でも、短所でもある。

きちんと見ておくべき参加者の一人だな。

そして、残りの二人──兎内雪斗と小山明頼も注目株。

Monet Entertainmentの練習生である二人は、練習生らしい堅実な実力と端正なビジュアルで人気を博してきた。特に、小山明頼の方は無駄にうるさいのがキャラ立ちが良く、視聴者に認知されているらしい。

番組的にも美味しいから、彼はもう少し残しておきたいところ。

……と、そんな有望株の集まったこのチームだけど。

昨日のリハーサルでの彼らのステージは、『JACKPOT』鷹城葵の独壇場と言っても過言では無かった。

葵以外に全く目の行かない、まるでソロパフォーマンス。

それを目にした瞬間、やっぱりデビュー前の参加者たちの中にトップアイドルを放り込むなど、逆に彼らの心を折るだけになるんじゃないのかと心配してしまった。

──果たして、あの惨状から、どれほどマシになったのだろうか。

葵と遜色ないまでに仕上げろとは言わないが、それぞれの見せ場では輝けるくらいにはなっていてほしい。

「収録始まりまーす!」

スタッフのその声に、ピシリ、と一瞬にして緊張感が張り詰める会場。

ちょっと怖いけれど……どうか、少しでも参加者たちの成長が見られますように。

そんな願いと共に、私は舞台に視線を向けた。