さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


……と、ふいに。

「……やば、めっちゃかわいい」

愛おしげに目を細めて落ちた呟きに、目を見開く。

あれ……やば、いちゃつきモード入った?

本能的な危険を察して、反射的に身を引こうとすれば。

ギュ、と片腕で簡単に引き寄せられ、そのまま──ごく手慣れた仕草でキスされる。

「っ……!」

そのまま、さら、と甘やかすように髪を撫でられて。

真っ直ぐに愛をぶつけるみたいなキスに、もろに顔に熱が集まっていくのが分かる。


──や、ばい。


ようやく唇が離れて、慌てて顔を逸らそうとしても、見透かすみたいに頬に手を添えられ、固定されて。

「あー、照れてる……可愛いね、ほんと」

「ちがっ……!」

甘やかすみたいに顔を覗き込んでくる京に、心臓が早鐘を打つ。

やっぱ私、京の強引なアプローチに弱すぎる……早く耐性つけなきゃ。

「やっぱ俺のことちょっとは好きなんじゃない、千歳」

「……そろそろ仮眠取るからちょっと黙って……」

「うん、一緒に寝よ」

「え」

反応に詰まった隙をついて、そのまま抱き込まれ、ドサッとベッドに引き倒される。

……いいって言ってないのに。

変わらない強引さに、内心ちょっと口を尖らせるけど。

「……結局抵抗しないんじゃん、優しいね」

布団を引き寄せながら、至近距離で愛おしそうに目を細める京。

けれど、その瞳の奥には、ほんの微かに、拒まれなかったことへの安堵感みたいなものも滲んでいて。

……今の京なら、本気で押しのければ、多分すぐに離れてくれるんだろうな。

強引で、傲慢で、情緒がぐちゃぐちゃで。

独りよがりだった彼は──ちょっとずつだけど、私の目を見て、私の反応を探りながら、彼なりの形で想いを伝えようとしてくれている。

その優しさを前に、どうしても、冷たく突っぱねる気は起きなくて。

「……うん」

その胸に額を預けると、それに応えるみたいに、ギュッと抱きしめられた。

甘やかすみたいに髪を撫でられているうち、徹夜明けの疲労がじわじわと押し寄せてきて、瞼が重くなっていく。

「……めっちゃいい匂い。なに使ってんの」

「なんか、高いやつ……」

一見は、何も変わっていないみたいな光景だけど。

少しずつ、そして確実に、私と京の間にあった歪な空気が変わり始めていく。

──そんな予感の中で、私は、まどろみの中に意識を沈めていった。