審査員が全員着席し、静かに場が整う。

私の動揺もようやくおさまってきたところで、再び巫静琉がマイクを握った。

「では、早速パフォーマンスに入っていきましょう」

その言葉とともに、舞台袖からスタッフたちが何かを運び込んでくる。四角い箱。見覚えのある形。

……まさか。
また、くじ?

胸の奥で、嫌な予感が広がる。
私、本当にこういう運試しの類苦手なのに……トップバッターとかになって頭を抱える未来が目に見える。

どうせなら、きちんと運営側で順番を決めてほしい。
実力者は後ろの方、とか。そっちの方が演出的にも盛り上がるだろうに。

「パフォーマンスの順番は、くじで決めていきます」

やっぱり。
思わず項垂れる私の様子が、カメラに抜かれた。

会場がざわめく中、静琉はためらいなく箱の中に手を差し入れ、1枚の紙を引き上げる。

そして、その名前を確認した瞬間、ふっと目を細めた。
興味を惹かれた参加者の名前を見つけたときの表情。

誰がくる?

瞬間、プロジェクターが光を放ち、大きく映し出された名前。

【峰間 京 / KEI MINEMA】

……セーフ。
肩の力が抜ける。

危ない危ない、ルームメイトだ。もう少しで本当にトップバッターになるところだった。

しかし、あの女たらしがトップバッターか。目立つ経歴も聞かなくて、実力はまったくの未知数。

大丈夫かな。
荷が重いんじゃないかと心配しつつ、モニターに映った彼の表情を確認し──

そして、思わず息を呑んだ。

彼が浮かべていたのは、自信に満ちた、涼やかな余裕の表情。

大抵の参加者が緊張で表情を強張らせる中、トップバッターであることを気にも留めないような堂々とした佇まい。

彼と初めて出会ったときに感じた、あの抗いがたい魅惑的なオーラ。
それをさらに強く、追体験するかのような感覚だった。

これは、ただ度胸があるだけなのか──それとも?

私は固唾を飲んで、彼がステージに向かうのを見つめていた。