さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


「葵先輩、京のこと助けたいんですね」

喧嘩するほど仲が良い、とはちょっと違うかもしれないけれど。

少なくとも葵の方は、京のことを放っておけない、っていうかむしろ面倒見てあげたいくらいなんじゃ?

──なんて、そんな暖かい感情は、ほんの三秒しか保たなかった。

「うん。だってもし俺が京の才能を開花させられたら、カンナさん、高性能ゲーミングデスク買ってくれるっていうから。あ、しかもチェア付きね。激アツじゃね?」

即答でそんな言葉を返され、先ほどまでの感動は強制終了させられる。

「ちょろ……」

「俺、対価のない善意で動いたこと一回も無いの」

「誇らしげに言うことじゃないですよ?」

忘れていた。葵が他人に共感するという心を持っていないこと。

いつだって自分の利益最優先、他責思考万々歳!って感じの自己中大魔王なんだった。

さっきちょっと見直してしまったのが悔しい……。

と、一人損したような気分になる私をよそに、葵はさらりと話題をもとに戻す。

「ま、そんなわけで、連絡先だけ交換してきた。でも、メッセージ送っても当然のように未読無視。ま、あの手の奴らって、成人男性には徹底的に興味ないからね」

不快そうに顔を歪めながら、葵は赤信号で車を止めた。

『成人男性には徹底的に興味ない』──その言葉に、私は一旦顎に手を当てて考える。

そっか……それじゃ、葵がこれ以上踏み込むのはおそらく無理だよな。

だったら。

「……あの、彼の守備範囲って、どれくらいまでなんですか?」

「さぁー?でも、中学時代の峰間京は抱けたわけでしょ。だったら、若原清架よりは広いんじゃない」

そのまま、ドリンクホルダーに置いてあった缶コーヒーを口に運ぶ葵。

その横で、私は少し安堵のため息混じりにこぼす。

「良かった、じゃあ私で釣れるかもですね」

「ゲホッ……!!」

その途端、盛大にむせ返る葵。

──私、そんなに変なこと言った?

「ちょっ……ゲホッ、何を、ゲホッ、ゲホッ」

コーヒーが気管に入ったのだろうか、涙目で咳き込みながらこちらを睨む葵。

……とりあえず、言うタイミングはミスったんだろうな。

内心ちょっと申し訳なく思いつつ、私は苦笑混じりに言う。

「だって、そうするしかなくないですか?他の人に囮役を頼むわけにもいかないし」

「自分が何言ってるか分かってる……?本気で襲われるよ?」

ありえない、と言うふうに首を振る葵。

でも、だからと言ってこちらもやすやすと引くわけにはいかなかった。

だって──私は既に、遥風の時の失敗と、前回の京の失踪で学んでるんだ。

感情だけに駆られて、他人に寄り添おうと突っ走るのは、よくない結果を招くって。

だから、今度こそ私はきちんと計画を立てる。

綺麗事じゃなくて、根本的な解決のために。

決して妥協はせずに──諸悪の根源を徹底的に暴き出すんだ。