さて、一体どうして私たちが若原清架を逮捕にまで追い詰められたのか、という経緯を語るなら──
話は、私と葵が繁華街に京を探しに行った日の翌朝へと遡る。
いつものように、レッスンに向かう車の助手席。
窓の外では、始業前の都市の街並みが静かに流れていく。
フロントガラス越しに差し込む眩しい朝の光にちょっと目を細めながら──
私はぽつり、と切り出した。
「……そういえば、昨日の電話。結局なんだったんですか?」
昨夜、突然顔色を変えて飛び出していった葵。
その事情を聞きそびれていた私は、少し探るように問いかける。
運転席の葵は、窓枠に片肘をかけた無造作な姿勢のまま、「んー?」と曖昧に声を漏らす。
「白藤天馬がさ。芸能人の集まりに顔出す予定だったんだけど、面倒になったらしくて。代打で行けっていう横暴オファー」
「芸能人の集まり……パーティー、的な?」
「そ。最初は断るつもりだったんだけどね」
そこで言葉を切り、葵は長い睫毛をスッと伏せる。
「──出席者の中に、『明石兼正』の名前があって」
その名前に、どこかで聞き覚えがあって、私はちょっと首を傾げる。
それって、確か……
「ドラマ監督の、ですか?」
「あー、そう。知ってんだ?」
少し意外そうに眉を上げる葵。
まあ、意外だろう。だって、彼の知名度は一般的にそこまで高くない。
私だって、うちの母親がかつて何度か彼の作品に関わったことがあったので、偶然覚えていただけだ。
