「京が今行方不明になってます。きっと小夜さんにもらった毒で死ぬつもりです」
『……へ?』
拍子抜けしたような声を出す小夜ちゃん。
『なにそれ……ってか待って、なんで私の名前知ってんの』
「京のルームメイトだったんで、話は聞いてますよ。京、小夜さんのことかなり大切に思ってるみたいでした」
さらりと大嘘を吐く。
隣の葵から『正気?』とでも言うような視線が飛んできたけど、私は無視した。
今必要なのは真実じゃない。小夜ちゃんを『その気にさせる』言葉だ。
……どうやって辻褄を合わせようかな、と頭をフル回転させながら、平然を装って言葉を紡ぐ。
「俺が思うに、京は京なりに考えたんだと思います。結果、やっぱり小夜さんを巻き込むのは嫌だった。だから、突き放して、自分だけ消えることを選んだ。……それだけ小夜さんのこと、大切に思ってたんでしょうね」
……苦しいか?
ちょっと不安に思いながら、電話越しの沈黙を耐える。
数秒後──
『ぅ、うぅっ……』
震えるような嗚咽。
『京くん、そんなのやだ、やだよぉ……』
……言いくるめられたらしい。
普段の小夜ちゃんだったら勘付いたかもしれない。
けど、今完全に取り乱しているこの状態では、私のツギハギの言葉に縋るしかないみたいだった。
完全に騙してしまったのを心苦しく思いながらも、ここで引くわけにはいかない。
私は、深く息を吸い直すと、決定打を放った。
「このままだと、京は一人で死にます。──このまま一生会えなくなってもいいんですか?」
『……い、嫌っ!』
よし、と心の中で小さく拳を握る。
隣では、葵が感心なのか呆れなのかよく分からない顔をしている。
私はちょっと息を吐くと、できるだけ優しい声音を作って言った。
「ですよね。じゃあ、今京がどこにいるのか探すのに協力してくれませんか?」
『でも、位置情報も、もう切られてて……』
さっきとは打って変わって、消え入りそうな声で言う小夜ちゃん。
ああ、小夜ちゃんなら位置情報持ってるかなって期待してたのに……。
その望みが消えて、ちょっと口ごもってしまう私。
そんな私に助け舟を出すように、すかさず葵がスマホに唇を寄せてきた。
「峰間京は交通系ICやクレジットって使ってる?会社にわけを話せば履歴が見られるかも」
一拍の沈黙。
電話越し、小夜ちゃんの呼吸が、一瞬止まって。
『……あ、私、京くんにクレカあげてたんだった。自由に使っていいよって……』
……っ!葵、マジでナイス……!
思わず葵に視線を向けると、ふっ、と薄く微笑み返される。
「あいつ家無いし、金も無いし、どうせヒモやってんでしょ」
葵は元々頭が良い上に、ゲーム攻略好きなだけあって、こういう行き詰まった時の突破口を見つけるのは抜群に上手いんだろう。
とはいえ、自分のクレジットカードを勝手に使わせちゃう小夜ちゃんの盲目さもすごいけど……。
