「俺らも協力します」

反射的にそう言った私に、スタッフさんは弾かれたように顔を上げた。

「え……でも、明日本番なんじゃ」

「大丈夫です。とりあえず見つかったら事務所に連絡しますんで」

ニコ、ととびきり甘い微笑みでゴリ押しすると、スタッフさんはブワッと頬を赤らめ、何度も頭を下げながら走り去っていった。

──ガチャン。

扉が閉まり、静寂が戻る。

まさか、若原清架が事務所に打ち合わせに来ていたなんて。

峰間京は知っていたのだろうか。

彼は、ああ見えて、衝動的にことを進めるタイプではない。

……きっと、知っていて、計画していたはずだ。

若原清架が来ると、彼の広い人脈のどこかから情報を得て。

彼の、アイドルへの熱意の無さ。
冷めたパフォーマンス。
一週間、謎の空白期間。

バラバラだった出来事の一つ一つが、一気に線で繋がって、見えてくる一つの結論。

──復讐。

最初から、若原清架と接触するために。

自分を捨てて姿を消した彼女に復讐して、全てを終わらせるために──このオーディションを受けて。

だから、自分がデビューしようがしまいがどうでも良くて、いつもどこか冷めていたのだ。

そして、この一週間の空白期間で、復讐のための準備を整えていたんだと思う。

例えば、あの時下げていたビニール袋。その入手ルートは……小夜ちゃんだった。

裏社会に通じていて、違法なものにも簡単に手が届くような子。

きっと、あそこには、清架を傷つけるための何かが入っていた。

凶器か、薬物か。

はっきりしたことは分からない、けれど──

一つ確かなのは、京は小夜ちゃんを完全に利用していたってこと。