「……しかも、俺が聞いた話によると、清架は落ち目の時期、京を──業界でも有名なペド監督に差し出して、ドラマの主演を取ったらしい。それも、ちょうど二年前くらいの話」
やばいよな、と吐き捨てるように言う葵。
「単なる噂だって言われてるけど、俺は……マジな話だと思ってる。業界のあの辺は、表に出てないだけで、ずっと腐ってるから」
……成長して、自分の『好み』から外れた京は、もう彼女に取っては玩具ですらなくて。
ただの、若原清架のキャリアのための手駒。
それでも京は、どこかで期待してしまって、抗うことができなかったんじゃないだろうか。
「……で、結局、清架は京を捨てた。麻薬所持容疑で京が年少に入った記録があって、その期間中に清架は一人で都外に転居してる」
「その麻薬所持が、濡れ衣って可能性は……?」
「……ある。最初に麻薬所持が疑われてたのは清架の方なんだ。けど、事情聴取の翌日、京が一人で署に自首しにきたらしい……不自然だろ」
残酷すぎる事実に、頭がくらりとして、視界が狭まった。
きっと京は、普通の人生を送ってきてないんだろうなとは前々から思っていた。
だって、女の子をあんなふうに雑に扱って。
口説いて、抱いて、依存させて、突き落とすことが楽しいって。
絶対にまともじゃない、って思ってた、けど。
「……復讐、だったんだ」
思わず、ぽつり、とそんな言葉が溢れた。
きっと京は、清架を憎んでいる。
でも清架は京の前から姿を消してしまったから、直接その怒りをぶつける場所なんてなかった。
彼の中に積み重なった膿のような怒りや恐怖や、救いようのない孤独を、どうにかして発散しなきゃ、生きていけなかったんだ。
だから、自分が清架にやられたことをそのまま他の女の子にぶつけてる。
弄んで、突き落として。
女の子を清架に重ねて、擬似的な復讐にしてるんだ。
けど、それでもやっぱり、何一つ癒えないまま、過去の痛みは自分の中に積もったままで。
──そんな彼に、私は……なんて言ったっけ。
