小学校に上がったあたりから、清架のスキンシップはエスカレートしていった。
けれど、俺はその全てに応えた。
深くキスされたり、身体を触られたりしても、拒絶せずに、受け入れて。
そういう時に決まって香ったあの甘ったるい香水は、まるで脳神経を麻痺させるみたいに強くて、俺に正常な判断をできなくさせた。
そのうち、あぁ、こうしたら清架が喜ぶんだ、っていうのが分かってきて、無意識のうちに俺は、清架の『理想』を演じるようになっていた。
愛されたい。
愛されるためには、清架の望む姿でいなければならない。
例え辛くても、もう嫌だと思っても、常になんともないような顔をしていないといけない。
たった一つでも期待に背けば、捨てられるかもしれない。
そんな恐れが、自分の感情を表に出すことを、どんどん下手にさせた。
自分を殺して、余裕そうな顔を貼りつけて、求められる言葉を選んで。
完璧な『清架の京』を演じるほかはなかった。
──けれど、そんな努力も結局、すべて無駄だったのだ。
中学に上がった頃からだろうか。
声変わりをして、身長も15cm伸びて、子供らしさが消えていくと。
それにつれて清架の視線は、どんどん冷たくなっていった。
愛しげな眼差しは、興味のないガラクタを見るようになって。
自分が何かしてしまったのだろうか、と思って必死にわけを聞こうとすれば、平手打ちが飛んできた。
『最近、生意気じゃない?誰のおかげでここにいられると思ってるの?』
……怒らせた自分が悪い。
そう思い込もうとした。
自分が悪いのなら、自分が変わればきっと彼女はもう一度愛してくれるから。
……けれど、何をしても、彼女の視線が再び柔らかくなることはなくて。
代わりに現れたのは、清架の『お友達』と呼ばれる芸能界のお偉いさんたち。
俺が彼らの相手をすることで、清架に大きな仕事が回ってくる、という話だった。
芸能界には、特殊な性癖をもった人間がやたらと多いらしくて。
清架は、少年愛者である彼らの相手に俺を当てがおうとしていたのだ。
普通なら、家出してでも断るべきところだったのだろう。
けれど、その時の俺の思考回路はほとんどぶっ壊れていて。
もし上手くいけば、再び清架の愛がこちらに向くのかもしれない、と思ってしまったのだ。
結果、俺は中二の夏、清架の『お友達』相手に吐き気を催すような体験をして。
その頃落ち目気味だった清架は、そのおかげでドラマの主演を勝ち取り、それが流行って再ブレイクした。
──けれど。
『顔しか取り柄ないんだから、身体売ってちょっとは私のために稼いできたらどうなの』
清架の態度が変わることはなかった。
