「なんで」
率直な疑問をぶつけると、翔は少し気まずそうに視線を逸らした。
あの天鷲翔が言いにくそうにする話題なんてあるんだな、と妙な感心を覚える。
「俺ら、幼馴染なんだけど。栄輔って昔から、妬まれやすい節があってさ。大きな才能を持ちすぎて」
大きな才能?
あの天鷲翔にそこまで言わしめる栄輔って、一体。
今日話しているだけでは、そこまで圧倒的な何かは伝わってこなかったけどな。
「で、特に、皆戸遥風って奴が厄介なんだ。栄輔に相当な恨み持ってて、下手したら、本当に危害を加えかねない」
皆戸遥風。
今朝、栄輔と喧嘩していた黒髪の少年。『TRICK』の一番人気メンバーであったにも関わらず、気性の荒さが原因で脱退。
私が今彼について知っている情報はそれくらいだけど、それだけで充分、彼の問題児ぶりは伝わってくる。
そんな奴に大切な幼馴染が目をつけられているとなれば、まあ、確かに心配にはなるかもね。今朝だって実際、危害加えてたようなものだし。
けど、なんでわざわざ私にそんなことを頼むんだろう。
「お前が栄輔を守ればいいんじゃないの?」
疑問をぶつけると、翔は一瞬だけ言葉に詰まる。
「……俺、遥風とも仲良いから。俺が栄輔側についたら、さらに遥風を刺激すると思うんだ」
なるほど。
自分は手は出せないから、自分以外に『栄輔の護衛役』が必要、と。
そして、今日彼と仲の良さそうだった私を、そのポジションにあてがおうとしてるってことか。
詳しい事情は分からないけど、唯一確かなことは、翔にとって栄輔はとても大切な存在だということ。
そして、そんな存在を何も知らない第三者に侮辱されることは──誰だって地雷だろう。
「無理」
冷たく言い放つと、翔の目の色が変わった。
一瞬にして、空気が張り詰める。
けれど、私は怯まない。
むしろ、内心でほくそ笑みながら、完璧に演技を続ける。
「プライベートであんな芋くさいのと仲良くすんのとか、無理に決まってるくない」
わざとらしく肩をすくめ、心底うんざりしたように眉をひそめてみせる。
「今日だってかなり耐えたし。馴れ馴れしく話しかけてきて、マジで鳥肌止まんなかったね」
挑発するように、わざと雑にスプーンを置いた。
カツン、と食器が鳴る音が、静寂を際立たせる。
翔は──明頼とは違った。
拳を振り上げることはなかった。
けれど、その代わりに彼の瞳に浮かんだものは、明らかな失望。
胸の奥が、わずかに痛む。
「……そっか、残念」
彼はポツリとその一言だけこぼすと、踵を返して歩き去っていった。
一部始終を見ていた周囲の参加者から、深く突き刺さる視線。
──いいよ、別に。
冷たい視線で見られることは、慣れてるし。
私は黙ってイヤホンを付け直し、スマホの画面に目を落とした。
『Sugar⭐︎Dream』のMVが再生される。
目の前の食事を淡々と口に運びながら、私は感情を殺し、映像の研究を再開したのだった。
率直な疑問をぶつけると、翔は少し気まずそうに視線を逸らした。
あの天鷲翔が言いにくそうにする話題なんてあるんだな、と妙な感心を覚える。
「俺ら、幼馴染なんだけど。栄輔って昔から、妬まれやすい節があってさ。大きな才能を持ちすぎて」
大きな才能?
あの天鷲翔にそこまで言わしめる栄輔って、一体。
今日話しているだけでは、そこまで圧倒的な何かは伝わってこなかったけどな。
「で、特に、皆戸遥風って奴が厄介なんだ。栄輔に相当な恨み持ってて、下手したら、本当に危害を加えかねない」
皆戸遥風。
今朝、栄輔と喧嘩していた黒髪の少年。『TRICK』の一番人気メンバーであったにも関わらず、気性の荒さが原因で脱退。
私が今彼について知っている情報はそれくらいだけど、それだけで充分、彼の問題児ぶりは伝わってくる。
そんな奴に大切な幼馴染が目をつけられているとなれば、まあ、確かに心配にはなるかもね。今朝だって実際、危害加えてたようなものだし。
けど、なんでわざわざ私にそんなことを頼むんだろう。
「お前が栄輔を守ればいいんじゃないの?」
疑問をぶつけると、翔は一瞬だけ言葉に詰まる。
「……俺、遥風とも仲良いから。俺が栄輔側についたら、さらに遥風を刺激すると思うんだ」
なるほど。
自分は手は出せないから、自分以外に『栄輔の護衛役』が必要、と。
そして、今日彼と仲の良さそうだった私を、そのポジションにあてがおうとしてるってことか。
詳しい事情は分からないけど、唯一確かなことは、翔にとって栄輔はとても大切な存在だということ。
そして、そんな存在を何も知らない第三者に侮辱されることは──誰だって地雷だろう。
「無理」
冷たく言い放つと、翔の目の色が変わった。
一瞬にして、空気が張り詰める。
けれど、私は怯まない。
むしろ、内心でほくそ笑みながら、完璧に演技を続ける。
「プライベートであんな芋くさいのと仲良くすんのとか、無理に決まってるくない」
わざとらしく肩をすくめ、心底うんざりしたように眉をひそめてみせる。
「今日だってかなり耐えたし。馴れ馴れしく話しかけてきて、マジで鳥肌止まんなかったね」
挑発するように、わざと雑にスプーンを置いた。
カツン、と食器が鳴る音が、静寂を際立たせる。
翔は──明頼とは違った。
拳を振り上げることはなかった。
けれど、その代わりに彼の瞳に浮かんだものは、明らかな失望。
胸の奥が、わずかに痛む。
「……そっか、残念」
彼はポツリとその一言だけこぼすと、踵を返して歩き去っていった。
一部始終を見ていた周囲の参加者から、深く突き刺さる視線。
──いいよ、別に。
冷たい視線で見られることは、慣れてるし。
私は黙ってイヤホンを付け直し、スマホの画面に目を落とした。
『Sugar⭐︎Dream』のMVが再生される。
目の前の食事を淡々と口に運びながら、私は感情を殺し、映像の研究を再開したのだった。
