それからも、私はほとんど毎日葵の家に通う日々を続けた。
とはいえ、最近は葵の仕事が立て込み気味で、なかなか家に帰ってこなくて。
私を自分の家まで送ると、またすぐ外出して、私が寝静まった後に帰ってくる、なんてことが多くなっていた。
でも、個人的にはそっちの方が気が楽で嬉しい。
というのも、作った料理をタッパーに詰めたら、そこからは完全に私の自由時間だから。
葵もいないし、京もいない。
一人だけの空間で、男装せず、人目も気にせずに好きなことをできる。
葵の家の作業部屋は防音だから、近所迷惑を気にせずに好きなだけダンスや歌も練習できるし。
今までの寮生活とは比べ物にならない快適さに、ずっとこれでいいな、なんて思い始めていた。
けれど、そのぶん──昼間のレッスンは史上最悪の地獄と化していた。
……っていうのは、峰間京と鷹城葵の対立が日に日に激化しているって意味。
例えば、京が必要以上に私に絡んでくるせいで、その度に葵が牽制して、修羅場みたいになったり。
もしくは、葵が必要以上に京のパフォーマンスをこき下ろし、京がピキって、暴力沙汰寸前の空気になったりなど。
そんなことばかりが続いて、私たちメンバーはいつ二人が殴り合いを始めるのかと終始緊張しっぱなしだった。
そしてその緊張がついにピークに達したのは、昨日の中間発表でのこと。
私たちのパフォーマンスは、前よりマシにはなっていたけれど、それでも依然として葵の独壇場であることには変わりなく。
そして当然、審査員たちもその実力差に苦言を呈してきた。
『参加者と鷹城葵との差が際立ちすぎているな』
『グループというより、彼のソロパフォーマンスに見えてしまう』
『葵くん以外、全員バックダンサーみたいでした』
……言われるだろうな、って覚悟していたこと。
けれど、実際に真っ向からそれを言われてしまうと、精神的に堪えたメンバーも多かったみたいで。
スタジオに戻ったときに、私たちのグループの空気は完全に沈み切っていた。
──そんな重苦しい静寂の中、葵が京の肩にポンと手を置いて。
『……ようやく分かった?自分の表現が間違ってるって』
そんな爆弾発言を投下したのだ。
京がそんな煽りに黙っているはずもなく。
私たちが焦って同時に振り向いたときには、既に京の方が葵の胸ぐらを掴み上げていた。
『うるっせーんだよさっきから』
『あぁ?』
こうして最早誰も止められない殴り合いが始まりそうだったのを、私が礼於さんと棗さんを呼んできて二人がかりでなんとか止めてもらったのだ。
葵はJACKPOTの年上組に正座させられてその煽り癖をこっぴどく叱られ、京はその様子を写真に撮って待ち受けにしていた。どっちもどっち……。
「……はぁ」
体力的にも精神的にも、私の疲労は既に限界に達しかけていて。
絶対に、このまま何事もなく本番を迎えられる気がしない。
そんなふうに先行きを案じて、思わず大きなため息を吐いていると。
