さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


御坂小夜。

地下アイドルグループ『Tink♡』の絶対センター。

鷹城葵の元カノで、峰間京の……一応、今カノ。

突然この家に押しかけてきた彼女は、なんと、ここが葵の家だとは全く知らなかったという。

「だって昨日、京の位置情報がここで止まってたから。どんな女の子と浮気したのかなって気になって見にきたら……まさか葵くんの家だったなんて」

「お前ホント相変わらずだね」

表情を引き攣らせ、若干呆れたようにそう言う葵。

けれど、当の本人はまったく気にしていない様子で、まるで自分の家かのようにソファに堂々と腰掛けている。

「っていうか小夜、峰間京に別れ話のDM売ったでしょ」
「あ、バレた?なんか頼まれちゃったからさ。でも拡散はしないでって言っといた!気が効くでしょ♡」
「なにお前」
「ひど〜い、葵くんのためを思ってなのに〜」

葵にも全く臆せずテンポの良い会話を繰り広げる彼女を、私はまじまじと見つめる。

きっと丁寧にケアされてるんだろうなって思う、艶々の黒髪ボブヘア。
軟骨まで開いたオシャレなピアス。
小動物を思わせる、黒目がちな童顔ベビーフェイス。
ブカッとした黒いパーカーが、その肌の白さを際立たせる。

……直接落ち着いて見てみると、まさに男ウケ要素を詰め込んだみたいな完璧美少女だ。

まあ、確かに鷹城葵と峰間京をハシゴしてるんだったら、これくらいの完成度じゃないとダメか……と、なんだか納得してしまう。

「ってか、なんで峰間がいる時じゃなくてわざわざ翌日に来んの」
「いや、やるなら京くんの見えないところで始末した方がいいじゃん?ってことで」
「とんでもねぇな」
「えー、重いくらいが可愛いっしょ?葵くんも正直私に会えて嬉しいくせにさ〜」

揶揄うように言って、葵を軽く小突く小夜ちゃん。
その底抜けの明るさとメンタリティに、ちょっと感心してしまう。

こっぴどく振られた相手を前に全部冗談に昇華するノリの良さとか、さりげないボディタッチとか、私が絶対に自然にできないスキルを常備していて。

それに加えて、死ぬほど顔が良いってきたら、葵や京が興味を持つのも頷けてしまう。

そんなふうに思っていたところ、ふっ、と小夜ちゃんの視線がこちらを向いた。