さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


──と、そのときだった。

ピーンポーン。

空気を裂くようなインターホンの音が、静寂に響いて。

思わずビクッと肩が跳ね、脳内にかかった熱の霧が強制的に晴れる。

──あっ、ぶな……。距離取ろうって思ってたのに、いつの間にか絆されかけてた。

我に返って焦る私から、葵が軽く舌打ちをして身体を離す。

「……峰間京呼んだ?」

「ま、まさか」

慌てて首を横に振る。京は葵とできるだけ顔を合わせたくなさそうだったし、わざわざ来るとは思えない。

……誰だろう。

鬱陶しそうに眉根を寄せ、部屋を出る葵。

私も気になって、彼の後ろを着いていく。

ピッ、とモニターの電源を入れ、映し出された人物は。

『あ、こんにちは〜♡夜遅くにすみません!』

艶々の黒髪を顎のラインで切り揃え、ブカッとした黒いダウンを羽織った女の子。

映像が粗くて定かではないけど、多分金色のイヤリングカラーを入れてる。

その姿を捉えた途端、隣の葵の頬が微かに引き攣ったのが分かった。

『突然なんですけど……お宅、うちの峰間京とどういう関係ですか〜?』

その聞き慣れた名前に、私は少し息を呑んだ。

ゆるっとした口調とは裏腹に、その視線はぴくりとも動かず、真っ直ぐこちらを見つめてる。

相手から私たちは見えていないはずなのに、全て見透かされているかのような威圧感。

その瞳の奥に隠れた執着の強さに、どこか峰間京に通ずるものがあるような気がしてならなかった。

しばらく呆気に取られたように黙っていた葵が、数秒の間の後、ようやく口を開く。

「……何やってんの、小夜」

『……へ?』

画面越しの女の子は、その声に口をあんぐり開け、数秒固まっていた。

そして。

『その声……鷹城葵ーっ?!』

素っ頓狂な彼女の声が、モニター越しにキーンと響いたのだった。