「頑張ってんのに、弱さは見せない。最初っから完璧みたいなふりして、裏ではめちゃくちゃ苦しんでるみたいな、そういうとこ」
その言葉に、一瞬息が止まった。
深い夜空みたいに綺麗で、こちらを見透かしてくるような瞳。
ふと、今日初めて葵の本気のパフォーマンスを目にしたときの衝撃が蘇った。
自分が、周囲から『作品』としか見られていないと気がついた時の絶望感。
その追体験をしているような、痛みや苦しみを芸術に昇華した表現。
──彼も、私と同じように、誰かの『作品』として育てられてきたんだろうか。
昔の自分を見るような、同情するような葵の視線を前に、調子が狂い始めた。
「たまたま容姿と才能を持ち合わせていたからって、他人の理想を勝手に重ねられて……求められるままに期待に応えて、いつのまにか、『自分』が何だったのか分からなくなってる。そういうの、昔の俺とおんなじ」
ふわ、と柔らかく微笑みかけてくる葵に、心の壁が、優しく、静かに崩されていくみたいだった。
他人の期待で押しつぶされそうになって、自分のやりたいことが分かんなくなって。
そんな閉塞感を、目の前の彼も経験してきたのだろうか。
「……だからかな。千歳のこと、めっちゃ可愛く見えんの」
と、同時に。
──ギュッ、と優しく抱き寄せられた。
鼻先に柔らかく香る葵の匂い。
そのまま、さらっと優しく梳かれる髪。
……え。
あまりに急だったので、動揺も混じって鼓動が一気に加速し始める。
いつもなら、もう少し冷静でいられるはずなのに。
「な、俺のこと嫌いになった?」
ちょっと首を傾げて、さらりと揺れる前髪の下、悪戯っぽくこちらを試すみたいな瞳。
この距離じゃ、絶対にドキドキしてるのバレる……!
逃げなきゃ、って一瞬身を離しかけると、まるで見透かされてたみたいに、再度引き寄せ直される。
「っ!ちょっと……!」
抗議するように睨むけど、焦ったように顔を赤くしたままのそれはどうやら逆効果だったみたいで。
ぷつん、と理性が切れたみたいに目を細め、ちょっと唇を舐める葵。
やば──
襲われる、と直感して、体を強張らせた。
