さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


揺らぐ私を察したか、さらに追い討ちをかけるように、葵は私の手を取り、するりと指を絡めてくる。

「あとは……普通にお前、俺に弱み握られてるよね」

ギュッ、と手を握って、穏やかに笑いかけてくる。

綺麗な顔して恐ろしい脅迫をしてくる彼に、思わず顔をしかめた。

コイツ……最初から断らせる気なんか微塵もなかったんじゃん。

「……はい……」

ここまで言われたら、もう頷くほかなかった。

……リスクはとんでもないけれど、でも、私の男装がバレれば葵も無傷ではいられないし、そこのところきちんと分かって行動してくれるよね、流石に。

しかも、結構莫大なお金ももらえるんだから、そこまで絶望的な取引ではない、はず。

「脅してごめんね。けど、俺だって仕事で組む相手くらいは選びたいの」

そう言って、ポン、と頭に軽く手を乗せてくる葵。

脅してごめんね、はもうDV男のそれじゃん……。

っていうか、相手を選びたいんなら、尚更私なんかじゃなくていいでしょうに。

天下の鷹城葵なら、有名歌手やらトップアイドルやら、よりどりみどりで選べるでしょ。

「じゃあなんで私なんですか」

思わず、はぁ、と溜息まじりに零す。

葵はパソコンを操作する手を止めなかった。

淡々とタッチパッドに指を滑らせながら、こちらに視線をよこさずにぽつりと答える。

「さぁ……なんでだろうね。あんたがちょっと俺に似てるからかな」

低い、静かな声音。

昨日までの甘ったるい色とはまるで違う、真剣なトーン。

不意に変わった空気に、思わず顔を上げた。

「……え?」

問い返すと、葵は口元だけゆるく笑う。