「はい」
軽く返事をして、歩き出す。
私の外見だと、第1話冒頭のくじ引きシーンで視聴者を引き込むために使われる可能性大。
気は抜けない。
歩幅、手の位置、目線、表情。全てを完璧に。
息を呑む音。熱を吐き出すようなため息。瞬きを忘れ、モニターに釘付けの参加者たち。
ステージに上がると、カメラがすかさず私の顔をアップにして映し出す。
私はそれに応え、緊張したような表情を作る。
──さて、何が出るのかな。
ここまで引かれた課題曲は、ジャンルは違えどどれも名曲揃い。
なら、私の引く曲も、そう大きく外れることはないはず。
そう信じて、私は一枚のくじを選び取る。
そして、絶句した。
【 Sweet×Harmony -『Sugar⭐︎Dream』】
Sweet×Harmony。
エマ所属の、王道キラキラ女性アイドルグループ。
『Sugar⭐︎Dream』はそんな彼女たちの代表曲、つまり──王道キラキラ女性アイドルソングである。
私は、演技ではなく、素でその場に崩れ落ちてしまった。
「マジ……?」
会場から、どこか同情のこもった拍手が巻き起こる。
ネタ枠かよ……。
しかし、今は撮影中。
そう長く落ち込んでいるわけにもいかない。
気を取り直して立ち上がると、私はステージを降りて自分の席へと向かった。
……で、どうする?
男の楽曲を男らしく歌うのは簡単だ。
けれど、女性アイドルソングを、男っぽさを残したまま歌うとなると、話は別。
難易度が一気に跳ね上がる。
どの方向性でいく?
どの程度、可愛さを出す?
思考がぐるぐると渦を巻く中、席に戻ると、栄輔が瞳をキラキラさせて迎えた。
「この曲、絶対千歳くんにしかできないっすよ……!」
「喧嘩売ってる?」
今度は本心から、そんな言葉が出た。
この課題曲で落ちるのは仕方ないってことで、優羽は許してくれないだろうか。
──無理だろうなぁ。
途方に暮れた私は、悩ましげに頭を抱えるのだった。
軽く返事をして、歩き出す。
私の外見だと、第1話冒頭のくじ引きシーンで視聴者を引き込むために使われる可能性大。
気は抜けない。
歩幅、手の位置、目線、表情。全てを完璧に。
息を呑む音。熱を吐き出すようなため息。瞬きを忘れ、モニターに釘付けの参加者たち。
ステージに上がると、カメラがすかさず私の顔をアップにして映し出す。
私はそれに応え、緊張したような表情を作る。
──さて、何が出るのかな。
ここまで引かれた課題曲は、ジャンルは違えどどれも名曲揃い。
なら、私の引く曲も、そう大きく外れることはないはず。
そう信じて、私は一枚のくじを選び取る。
そして、絶句した。
【 Sweet×Harmony -『Sugar⭐︎Dream』】
Sweet×Harmony。
エマ所属の、王道キラキラ女性アイドルグループ。
『Sugar⭐︎Dream』はそんな彼女たちの代表曲、つまり──王道キラキラ女性アイドルソングである。
私は、演技ではなく、素でその場に崩れ落ちてしまった。
「マジ……?」
会場から、どこか同情のこもった拍手が巻き起こる。
ネタ枠かよ……。
しかし、今は撮影中。
そう長く落ち込んでいるわけにもいかない。
気を取り直して立ち上がると、私はステージを降りて自分の席へと向かった。
……で、どうする?
男の楽曲を男らしく歌うのは簡単だ。
けれど、女性アイドルソングを、男っぽさを残したまま歌うとなると、話は別。
難易度が一気に跳ね上がる。
どの方向性でいく?
どの程度、可愛さを出す?
思考がぐるぐると渦を巻く中、席に戻ると、栄輔が瞳をキラキラさせて迎えた。
「この曲、絶対千歳くんにしかできないっすよ……!」
「喧嘩売ってる?」
今度は本心から、そんな言葉が出た。
この課題曲で落ちるのは仕方ないってことで、優羽は許してくれないだろうか。
──無理だろうなぁ。
途方に暮れた私は、悩ましげに頭を抱えるのだった。
