このままだと、本当にいつか過労でぶっ倒れる未来が見える。
日中の練習での態度も、ただ単にやる気がないのかと思っていたけど、もしかしてこのゴミみたいな生活習慣が影響してるんじゃない……?
私は長く深いため息を吐くと、ポケットからスマホを取り出した。
すぐさまLINEから京の連絡先を探して、通話をかける。
「千歳……?」
怪訝そうな表情の葵。
3コール目で呼び出し音が途切れ、京の声が応答した。
『はーい、俺』
「京、もう買った?」
『何を?追ってた漫画ならちょうど全巻揃えたとこだけど』
「……」
こいつ、人のカード使って豪遊してやがる……。
あの京が大人しく葵にパシられてる時点でおかしいとは思ったけど、はなからタダで使われる気なんてなかったらしい。
内心呆れつつ、私は電話越しの京に指示を出す。
「今から言うもの買ってきて。豆腐、玉ねぎ、根菜、出汁、味噌。あと卵と漬物系」
『……なんて?』
「文面で送るから見て。じゃあね」
『ちょっ』
戸惑う京を無視してブッ、と通話を切ると、私はポカンとしている葵に向き直る。
「朝ご飯はちゃんと食べてください。今日は私が作るので」
「……っえ、マジ??」
何故か心配そうに眉根を寄せる葵。
文句でもあるのかな。もしかして偏食?
内心ちょっと首を傾げる私に、葵はぼそりとこぼす。
「いや、なんか、お前みたいな完璧美人って、料理が苦手っていうお決まりのフラグが……」
……なんの話?
「ギャルゲーでもやってるんですか?」
「興味ない、現実で間に合ってる」
「はいはい」
まだ寝ぼけて何かほざいている葵を軽くあしらいつつ、私は勝手にキッチンに入り込み、電気をつけた。
葵の日中の様子が、エネルギー切れが原因なら、ここで妥協するわけにはいかない。
「借りますね。基本的な料理道具や米くらいはありますよね?」
「まあ、一応……」
呆気に取られたような葵を無視して、私は米を炊く準備を始める。
まずこのとんでもない生活から叩き直さないと、どれだけ真面目に練習しろって言っても変わらないよね。
……私が、どうにかしよう。
勝手にそんな使命感を抱いて、私は着々と料理の準備を進めるのだった。
