さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


なんて返せばいいか分からず戸惑い、返答を探していると、隣で京が手を上げた。

「俺は?」

「あんたはそこら辺で野宿。マンションの植え込みとか多分寝心地いいんじゃない」

「大人な対応あざーす」

京はそんな軽口を叩きながら、自分の上着のポケットからスマホを取り出した。

「ところで、ちょっと見て欲しいものあるんすけど」

そう言って、葵の目の前に画面を突きつける京。

映っていたのは、DMのスクショのような画面。

葵と女の子のやりとりと思わしき文面だった。

目を凝らして、文字を読んでみる。

『やっぱり私、葵くんには釣り合わないのかな』

『俺に合わせる気ないなら無理なんじゃね』

『精一杯合わせてるつもりなんだけど、』

『じゃ、どう頑張っても合わないんじゃん?』

『そうやって突き放すの嫌だ』

『じゃあもうやめよっか。そういうの重い』

……うわ。

私と葵の表情が、同時に引き攣った。

御坂小夜(みさか さよ)って覚えてる?お前が昔釣って捨てた地下アイドル。今俺仲良くて、頼んでモラハラDM提供してもらったんだよね」

小夜、って、聞いたことある。

京がよく通話をしていた女の子の中の一人だ。
まさか、葵とも繋がりがあったなんて。

「これ、週刊誌に売ってもいい?」

ニコ、と笑う京。

なんて悪徳すぎる脅迫法……。

葵はこめかみに手を当て、しばらく黙り込んだまま天井を仰ぐ。

せっかく据え膳を食えそうだったところで、最悪な邪魔者が入って、しかもこんな方法で脅してくるなんて、私が葵なら本気で殴りたいと思う。

けれど、私の手前、暴力的な面を見せたらイメージが下がると思ったのだろうか。

数秒の沈黙の後、彼は諦めたように深く、長いため息をついた。

「……仕事の邪魔はしないで」

「はーい♡」

京が勝ち誇った満面の笑みで答えるのを横目に、呆れを通り越して、もはや感心すら覚える。

そんな私に気づいたのか、京が振り向きざま、軽くウインクを投げてきた。

そのいつも通りの調子に、私は心の中でちょっとため息を吐く。

──今夜は、長い夜になりそうな予感。