揶揄うように告げられた言葉に、思わず目を見開いた。
「なっ、違っ……!」
動揺して、声がひっくり返りそうになった。
本当に全然そんなつもりはなかった。
考えてみれば確かに、遥風の匂いは爽やかですごく好きだったけど……でも、断じて意識してたわけじゃない。
狼狽える私を面白そうに見下ろしつつ、京はちょっと肩をすくめる。
「いやさ、千歳ちゃん、午後練で死ぬほどテンション低かったから。今日遥風と話して、未練が募ったのかなって」
「っ……」
鋭い指摘に、ぐうの音も出なかった。
もう突き放したはずなのに、今日中途半端に関わってしまったせいで、忘れようとしていた気持ちが再燃してしまったみたいで。
でも同時に、今日の遥風の様子を見て、きっともう彼の瞳に私が映ることは絶対にないんだろうって確信してしまった。
自業自得だし、割り切らなきゃいけないのは分かってるんだけど。
──できることなら、ずっと仲良くしてたかったな。
「はぁ……」
思わず大きなため息を溢してしまう。
その音に反応したみたいに、京は顔を上げて、じっとこちらを見てきた。
「何言われたの、今日」
何気ない風を装って聞いてくる京。
けど、その眼差しは鋭くて、私の心の奥をのぞこうとしているのが分かる。
私は、そんな京から自分の表情を隠すようにそっぽを向いた。
だって、正直に話したら、『やっぱり未練しかないじゃん』っていじられるのは確定だから。
「別に何も」
それ以上の会話を拒絶するみたいに、ぼそっと小さく返すと、京は一瞬片眉を上げた。
