さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜

「では早速、くじ引きに移りましょう。名前を呼ばれた参加者から前に出て、課題曲を一つ引いてください」

巫静琉の声が響くと、呼ばれた参加者たちが次々にステージに上がり、くじを引いていく。

課題曲のジャンルは、本当に多種多様だった。

王道の男性アイドルソング、アグレッシブなダンスナンバー、K-POP、さらには洋楽まで──。

ボーカルが武器の参加者が激しいヒップホップ曲を引き、困惑する。
逆に、ダンスを得意とする参加者が音域の広いバラード曲を引き、肩を落とす。そんな光景も多く見られた。

どれか一芸に特化しているタイプには、なかなか厳しいシステムかも。
意に沿わない曲を引き、頭を抱える参加者に、観客席からは同情の拍手が送られる。

会場に張り詰めた空気が漂う中、次の名前が呼ばれた。

「次──天鷲翔(あまわし しょう)

その瞬間、会場が大きくざわめいた。

なんだろう。

モニターに映し出された、その参加者の姿を確認する。


その瞬間、思わず、息が止まりそうになった。


きめ細やかな白い肌に映える、夜空のような深い青色の髪。
星屑を散りばめたように瞬く印象的な瞳。
神がかり的に配置された、人間離れした華やかな容貌。
わずかに上がる口角、歩く所作の一つ一つに、余裕が滲み出る。

衣装を纏い、ヘッドセットマイクをつけてステージに立つ姿が容易にイメージできるような、完成された佇まい。
人の視線を受けることへの慣れ、圧倒的な──カリスマ性。

「……千歳くん、あれ」

瞬きを忘れる私に、こそっと栄輔が耳打ちする。

「俺の友だちなんすけど、マジエグい奴っす。さっき話した、アメリカで活動してたって奴です」

──彼か。

通りで、会場の空気が一変したわけだ。

芸能界では、たまにああいう『圧倒的なセンター適正』を持った人材が発掘されるという。例えば、そう、私の父親のような。

天鷲翔は、会場中の視線を一身に受けながら、堂々と壇上へ進み出ると、くじ引きボックスの前に立ち、指を伸ばす。

あの天才が、一体どんな曲を引くのか。

全員が固唾を飲む中、彼が選び取った紙片に書かれていたのは──

【 JACKPOT -『Wild Card』】

瞬間、会場がざわめいた。

昨年、社会現象を巻き起こした超ヒット曲。
派手なトラック、洗練された振り付け、誰もが熱狂するキラーチューン。
強烈なインパクトを持つこの楽曲は、パフォーマンスの印象を何倍にも引き上げる。

そして、まさに、彼に相応しいタイトル。

Wild Card ──最強の切り札。

運まで味方につけるあたり、本当に芸能界の寵児そのものって感じ。

──この人にだけは、絶対に嫌われとかないと。