と、そんなふうに思考を巡らせていた時。
「……通りたいでぇーす」
割り込んできた、不機嫌そうな声。
小山明頼だった。
いつの間にかスタジオに到着していた彼が、力任せに私から葵を引き剥がす。
「お前、勘違いすんなよな??千歳くんはお前のことなんか眼中にねーから。変な気起こすんじゃねーぞクソジジイ」
「二十歳ね俺」
「ジジイだよ酒飲めんだろ!!」
葵を睨み上げ、いらんことを言い始める明頼。
作戦の一環だって分かってるはずなのに、どうしてこう噛みついてくるかな……。
と、その時。
「うっさい明頼」
簡潔な暴言を吐き、背後から明頼の首を引っ掴んでスタジオに入ってくる雪斗。
すれ違いざまの目配せは、『大丈夫、もっとやれ』と言っているようだった。
彼らはこれを、単に葵にやる気を出させるための色仕掛けだと思っていると思う。
本当は、私の今後の社会的な生死がかかったゲームなんだけど……。
「じゃ、全員揃ったし曲かけからいきます〜?」
ずっと静観していた京が、腰を上げてそう提案する。
反対するメンバーは居なかった。
せっかく葵がやる気になったんだ。他のチームから遅れを取っているぶん、できるだけの回数を合わせておきたい。
残された時間は、たったの3週間。
葵との駆け引きも、もちろん頑張らなきゃいけないけど。
パフォーマンス面で気を抜いていたら、普通に脱落もあり得る。
……本当に、死ぬ気で頑張らなくちゃ。
