「あ、千歳ちゃんおはよー」
峰間京だった。
パーカーに、ぶかっとしたレザーブルゾンを羽織って、黒縁眼鏡をかけてる。
動くたびに耳元でチラッと揺れるチェーン付きのシングルピアス、多分女の子からもらったのであろうブランド物のネックレス。
彼が隣に腰を下ろすと、いつもの香水の香りがふわっと鼻腔をくすぐった。
この人、前までずっと遅刻魔で有名だったのに、三次審査になってからやたら早起きするようになったよね……。
そのことを少し疑問に思って、率直に聞いてみる。
「京、生活リズム良くなったよね。なんで?」
「あー、最近夜中に抜け出すこと少なくなってきたから」
肩をすくめてさらりと言う京。
「……ん?」
その言葉をすぐに脳内で処理できず、思わず聞き返す。
「だからー、今まで寮抜け出して女の子に会いに行ってたけど、それが無くなったから、ってこと」
「……はぁ??」
あまりにさらりと投下された爆弾発言に、開いた口が塞がらない。
……つまり、この人、毎晩私が寝た後に起きて抜け出してたってこと?
私は1回抜け出すのも大変だったのに、京は女の子に会うためだけに毎晩……?
処分のリスクもあるだろうに、本気でバカなの??
思わず顔を引き攣らせドン引きするけれど、京はどこ吹く風といった様子で続ける。
「けど最近は、千歳ちゃんいるから耐えれてる。おかげさまで健康的」
「怖」
天才は変人が多いっていうけど、京はまさにそれって感じだ。
常識が欠落しているというか、人間的に欠陥しているというか。
そんな危ない精神性が、彼の異様な色気にも繋がるんだろうけど……いつか本当に破滅的な行動に走りそうな危うさがある。
ちょっと注意してやろうと口を開きかけたのと同時に、「あ」と京が思い出したように顔を上げた。
「……そういえば千歳ちゃん、エマプロの反応見た?」
