さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜

その四文字が表示された瞬間、会場がざわめいた。
どうやら、この審査の内容を既に知っている参加者が多いらしい。

私は今までのエマプロを見たことがないから、詳細は分からないけど、とりあえず一人ずつパフォーマンスするってことだろうか。

ステージ上へ、スタッフたちが大きな箱のようなものを運び込んでくる。

巫静琉は、ステージ上をゆったりと歩きながら説明を続けた。

「個人審査では、参加者一人一人に異なる課題曲が与えられます。そして三日間の練習を経て、課題曲の歌とダンスを単独で披露してもらうというものです」

そう説明しつつ、ステージ中央に設置された大きな箱を指し示す巫静琉。

「課題曲は、このくじ引きボックスの中から引いたものとなります」

くじ引き──つまり、運も試されるってことだ。
正直言って、私、くじ引きにはあまり良い思い出がない。
おみくじで凶より良いやつ出したことないし、コンビニくじでは毎回のように参加賞のティッシュをもらうし。
昔やっていたゲームでは、目当てのアイテムを求めてガチャを天井まで回したことだってある。

嫌な予感はするけど、まあどんな課題曲だろうとやり切るしかない。

それに、きっとこの審査は、単なる実力審査じゃない。
曲を自由に選べないっていう縛りがある分、どんなジャンル、どんなコンセプトが来ても消化できる柔軟性が必要になる。
参加者たちのその『適応力』を測るのが、一番の狙いだろう。

「ちなみに、今回の審査を通過できる人数は決まっていません」

巫静琉の声が、静かに会場を凍らせる。

「こちらが設定した実力のラインより上か、下か。それだけです。つまり、全員合格する可能性もありますし、逆も然りです」

予想以上にシビアな実力主義。不要な人材は、容赦なく切り捨てるつもりだ。

ふと、不安がよぎる。

私、ちゃんと男の声保ってパフォーマンスできるかな。一応、男声で歌う練習はしてあるけど、やっぱりダンスと合わせるとなると話は別。
呼吸が乱れて、声のコントロールがブレた瞬間に終わりだ。個人パフォーマンスじゃ、誤魔化し効かないし。

──死ぬ気で練習しなきゃ。

私は唇を引き結び、静かにステージ上を見つめた。