画面の横に流れるコメント欄は、案の定大荒れだった。
『無双しすぎ』
『声質神だ……!』
『WHO IS THIS ANGEL?!(この天使は誰だ?!)』
『顔だけ勢息してる?』
『Chitose HARUNA IS MY BIAS NOW.(榛名千歳が今の私の推し)』
『C’est quoi ce garçon ?? C’est illégal d’être aussi joli !(この男の子は何なの??こんなに可愛いのは違法だよ!)』
日本のみならず、海外のファンからのコメントも混じり、滝のように流れていくコメントたち。
その一つ一つに、痛いほど共感してしまう自分がいた。
……前までは、こういうコメントも冷めた目で見ることしかできなかったのに。
『大好きとか そばにいてとか こっちからって? 言語道断
好きの高低 no words で揺さぶって そういうのが好きでしょ baby』
……この曲は有名だから、今までに何回か聞いたことはあった。YoutubeやInstagramのショートなんかでよく使われていたから。
この曲は、王道アイドルソングでありながら、メロディにはボーカロイドやアニメソングのようなサブカル感がある。
一部のオタクたちにはウケがいいんだろうけど、あんまり私のタイプではないな、なんてことを思っていた。
——なのに。
彼が歌うと、まったくもって別の曲みたい。
曲がもともと持つ中毒性が、彼の個性的な歌声によってこれ以上ないくらい引き立っている。
ビジュアル担当なんだろうな、パフォーマンスはそこそこかな——
そんな先入観は、一瞬で木っ端微塵に吹き飛ばされて。
スポットライトを浴びて完璧なアイドルを演じる彼の姿に圧倒され、ぞくぞくと鳥肌が止まらなかった。
『──He‘s already mine♡』
……くじ運の悪さを、実力でねじ伏せる。
その圧倒的な存在感、歌声、ダンス、表情作り、そしてあまりに恵まれすぎた天使のような顔立ち、全てが私の好みにブッ刺さって。
……私の冷めた日常の中に、火が灯った。
「ほぼ女の子じゃん、可愛すぎ」
口元を押さえてそう感想をこぼす日茉里に、私はぽつりと口を開く。
「ねえ……」
「ん?」
こちらを向いた日茉里に、私は静かに言った。
「ファンブログって、どうやって書くの?」
自分でも笑う。
推しができるなんて私に限ってありえないと思ってたのに。
私の人生初の『推し事』が、今この瞬間に始まった。
