一つため息を吐き、覚悟を決めたようにステージに向かっていく。
他の参加者たちが、何やら彼について噂しているようなカットが入った。
『あいつ、なんだっけ?』
『スイモニのやつ』
『あぁ……』
参加者たちの声に、少なからず同情が読み取れた。それも当然、ダンスも歌も単純なガールズグループの曲ではきっと実力は見せづらい。
彼はいわゆるハズレ曲を引いてしまったんだろう。
もったいない……もっと普通の曲だったら、さらに人気が出ただろうに。
『ガールズグループの曲を引いてしまった彼のパフォーマンスは……?!』
そんなテロップと共に映し出されたのは、真っ白なステージに立つ榛名千歳。
ライトを反射して淡く光る髪と、儚げなほど整ったシルエット。
静寂の後──
ポップで鮮烈なシンセサウンドが、静まり返った空気を一気に染め上げた。
振り返る千歳。
カメラに視線を送ったまま、口元だけで笑う。
あどけなさと計算が同居する、挑発的な笑み。
すぐさま、その笑みを引き継ぐように完璧なウインク。
……数秒間、頭が真っ白になった。
全身を駆け巡る、電流のような衝撃。
やがて、鼓動の音が耳に戻ってきて、やっと自分の動揺に気づいた。
……え?
何、この子。
衝撃を飲み込めないまま、歌唱パートに突入する。
『No one! 邪魔しないでよ My love』
澄んでいて、儚くて、それでいて芯のある、唯一無二の歌声が響いた。
その途端、ギュッと思い切り心臓が握りつぶされるみたいな感覚。
声、良……?!
顔にステータス全振りじゃなかったの?何この、解釈一致すぎる歌声。
カメラが切り替わり、会場の反応を映し出す。
今の私と同じように息を呑んで硬直する参加者、イヤモニを耳に押し当て感心したような表情を浮かべる審査員の鼓朱那さん。
画面の中の千歳は、華奢な指先をふわりと動かしながら、少し悪戯っぽい笑顔でカメラを見つめる。
その表情の作り方も、完全にプロ。
ちょっとした視線の外し方、口角の上げ方。
自分がどう動けば一番可愛いのか、完璧に研究し尽くされてる。
そのあざとさが、逆に彼の小悪魔感を引き立てて、めちゃくちゃ良い……!
