さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


さらりと頬にかかる、柔らかく透けるようなベージュ色の髪。
長いまつ毛、ガラス玉みたいな瞳、やけに現実味のない綺麗さ。どこか憂いを纏ったミステリアスさ。

こんな人が本当にいるんだ。

まるで、漫画とかアニメの世界から飛び出してきたみたい。

『榛名 千歳 (15)』

その名前のテロップが映し出され、私はちょっと納得してしまった。

だって、名前の中性的さが外見にピッタリだったから。

「……めっちゃ綺麗。外見だけだったら、この子が一番かも」

ぽつり、とそう溢すと、日茉里が涙でぐちゃぐちゃの顔を上げた。

「……マジ?」

ずいっ。勢い良く身を寄せられ、私は思わずのけぞる。さっきまで散々泣いてたくせに、私の言葉ひとつで切り替え早すぎ。

「榛名千歳くんね!ヤバいよねこの子も!一話でも出番少なかったのに、顔綺麗すぎて建国できそうってめちゃくちゃ話題なってた」
「ちょっ、まず涙拭いてから語って」

そう言ってティッシュを押し付けると、 日茉里は涙を拭きながらマシンガントークを続ける。

よっぽど、私が興味を示したのが嬉しかったんだろう。

「色んなアイドル知ってるけど、私が知る限り一番中性的で天使みたいな子。いつか遥風と絡んでくれないかなって思ってる。でも、くじ運悪いみたいで……あ、ほらほら」

日茉里に促されて画面に視線を落とすと、画面が切り替わり、EP.1での彼のくじ引きシーンが映し出されているところだった。

緊張した面持ちでくじを引き、なんと可愛い全振り系ガールズグループの曲を引いてしまう彼。

そして、先ほど天鷲翔が自分の前にパフォーマンスをすると決まった時の千歳の表情も映し出された。

今にも舌打ちしそうな、焦燥感の滲んだ表情。

確かに、自分の直前に天鷲翔みたいな有名人がパフォーマンスすることになったら、そうなるよね。

……ちょっと可愛いかも。

『終わったなと思いました。翔くんの完璧なパフォーマンスの後にどんな顔してステージに立てと?って感じ』
『運営さん、金輪際くじ引きはやめてくださいね』

インタビューで、カメラを拗ねたように睨みつける千歳くん。

その姿を見て、少し口元が綻んでいた。

すごく非現実的なビジュアルなのに、話してみると年相応の少年って感じ。