私は軽くため息をついて、パソコンのキーボードを叩いていた手を止める。
「日茉里が一番よく知ってるでしょ。私、アイドルには興味ないって」
「……でもさあ、なんか日常に楽しみあった方が良くない?唯世だって、趣味欲しい〜って、いっつも言ってるじゃんか」
日茉里の拗ねたような、それでいて鋭い口ぶりに、ちょっと言葉に詰まる。
確かに、趣味が欲しいとは常々思ってるけど。
「ね、一回でいいから見てみよ!エマプロ、全国から色んなタイプの精鋭たちが集まってきてるんだから、一人くらい唯世に刺さる子もいるかもだし!」
「うーん、どうなんだろうね〜……」
なんとなくはぐらかして、そのまま作業に戻ろうとする私の手を、日茉里ががしっと握ってきた。
その勢いに、思わずちょっと身体がのけぞる。
「お願い!今度こそ、唯世と同じ趣味を共有したいの!!」
キラキラと効果音がつきそうな瞳で懇願され、またもや言葉に詰まってしまう。
……日茉里が、ふわふわしているように見えてとことん頑固なことは、私が一番よく知っていた。
こうなってしまうと、きっと私が受け入れるまで帰してくれない。
……まったく。
「分かったよ、見るだけね」
「やったーー!!唯世マジ最高!!」
私の言葉に、飛び跳ねんばかりにテンションを上げる日茉里。
その熱量に圧されつつ、心のどこかで申し訳なく思う。
そんなに喜ばれても、結局また、ハマれないんだろうけど……。
「じゃ、今夜うちん家泊まり決定ね!ちょうど0時からEP.2が配信されるから!リアタイしよ!」
「はーい。なんかお菓子持ってくね」
「神!」
そんなこんなで、今日の夜は日茉里とエマプロ鑑賞会をすることが決定してしまった。
課題、溜まりまくってるけど……土日にまとめてやればいっか。
久々に日茉里とお泊まりできることの方が大事だし。
そんなことを考えながら、私は再びレポートの作業に戻るのだった。
