さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


「……だから、叶えなきゃって思ってる。僕も、雪斗も」

その言葉に、雪斗がピクッと反応した。

少しの間の後、顔を上げた雪斗。

「……そう。だから、ここで絶対叶える覚悟」

小さく、けれど、はっきりとした声だった。
さっきまでの迷いが嘘みたいに、まっすぐで、強い目。

……不器用な兄と、黙って支える弟。

そんなドラマのワンシーンみたいな、静かな決意の共有。

なんか、いいなって思った──その時だった。

ドサドサドサッ。

目の前で、お菓子の洪水が発生した。

振り返るとそこには、ポテチ、チョコ、ラムネ、グミ──大量のお菓子の山と、それを見下ろす明頼が仁王立ちしていた。

「……やっべ、全部ぶち撒けた。てへ⭐︎」

「てへ、じゃねーよ」

陽斗が露骨に眉をひそめて、苛立ち混じりに睨む。

「今いい感じに、僕の過去語りのターンだったんですけど?なに感動タイム秒で潰してんの」

「いやさ〜、なんかカッコつけてて気に食わんかったんだよね〜双子のセンチメンタル劇場きっつ」

「シバくよ」

陽斗に食ってかかれる明頼って、案外大物かもしれない。

そんなことを思いつつ、私は床にぶち撒けられたお菓子の袋ひとつ手にとる。

「……ところで、何この量。遠足でも行くの?」

私が聞くと、明頼はニッと笑って言った。

「これを肴に見ようと思ってさ……エマプロ2話!」

その言葉に、私はハッとして時計を見る。そろそろ、日付が変わる時刻……つまり、エマプロ2話の放送日だ。

「あ、それリアタイしなきゃ今回こそ」

ベッドでずっとつまらなそうにしていた京も、そのワードには即反応。

さっさと近づいてきて、手慣れた様子でノートパソコンを操作し始める。

表示された画面に浮かぶのは、『EMERGENCE PROJECT SEASON3 EP.2』放送まで、あと3分のカウントダウン。

隣で明頼がポテチを開け、陽斗がチョコバーを囓りながら座る。雪斗は黙ってパソコンを覗き込んでいた。

私は画面を見つめながら、手のひらに少し汗を感じる。

エマプロ第2話。

きっと、私の一次審査のステージ『Sugar⭐︎Dream』が放映される。

果たして、どんな風に映ってるんだろう。

視聴者の反応はどうなるだろうか。引かれないかな……?

期待より、怖さが勝ってしまう。けど──

今は、見るしかない。

私はドキドキと高鳴る鼓動を感じつつ、目の前の画面に視線を向けるのだった。