「……で、結果は?」
まるで自分の部屋かのようにドカッと腰を下ろし、尊大な態度で聞いてくる黒い人──否、陽斗。
彼らに、男装バラされる云々は流石に伝えられないから……それを隠して話すとしたら。
「概ね、成功かな。葵はこれから練習来てくれるらしい」
「マジかっ!!」
「おお……!!」
明頼は手を叩いて飛び上がり、雪斗はキラキラと目を輝かせた。
そして、陽斗はというと当然だというふうに無言で頷いている。
「この僕が協力したんだから、上手くいってくれないと困るよね。これで雪くんのステージも安泰かな」
ぺりぺりとパックを剥がしながら、満足げに言う陽斗。
陽斗って、なんとなく、自分第一みたいな印象だったけど……雪斗への対応を見てると、なんだかんだ、ちゃんと他人を気に掛けられる人なんだなって思った。
燃え尽きそうだった雪斗に喝を入れたり、私たちの作戦に(半ば強引にだけど)協力してくれたり。
「……陽斗って、本当に雪斗と一緒にデビューしたいんだね」
ポツリ、とそうこぼすと、双子が驚いたように顔を上げた。
私の言葉にちょっと考えるような素振りを見せる陽斗。そして、少しの間の後、口を開いた。
「……いや僕、嫌だけどね。こんなウジウジ一般人」
「はっ?!」
はっきりと言い放つ陽斗に、あからさまにショックを受けた顔をする雪斗。
「本当はこんな臆病な常識人とじゃなくて、もっとプロ意識バチバチな子と組みたいよ。天鷲くんとか、椎木くんとかさ。そっちのが絶対気も合うと思うんだよねん」
ずーんと落ち込む雪斗の顔をちらりとも見ずに、むしろどんどん追撃する陽斗。
本当、陽斗ってこういうとこ辛辣すぎる……。
その容赦ない口ぶりに半ば呆れていると、「でも」と陽斗がちょっと目を伏せた。
「……死んだ母さんがさ。僕ら2人で、同じステージに立ってるところ見たいって、言ってたから」
妙に静かな口調。いつもの無敵スマイルが、少しだけ弱く揺れた気がした。
