俺の性格に問題があることくらい、流石に分かってる。
『与えられた仕事が出来ないなら、芸能人をやる資格はない』
今日、棗に言われた言葉が脳裏にこびりついて離れない。
……資格がないなら、ないでいい。
俺だって、やりたくてこの世界に入ったわけじゃないんだから。
いつものようにテラスに出ると、夜風がひんやりと頬を撫でる。
気づけば毎晩、ルーティーン的にここに来るようになっていた。
「……はぁ」
コートのポケットから小さな箱を取り出し、中から一本抜き、唇に挟む。
ライターを取り出し、かちりと火をつける。
ファンの求める『葵くん』は、清純で、真っ直ぐで、煙草なんてしないんだと思う。
そんなことを思いながら、目の前でゆらめく細い煙をぼんやりと見つめる。
……せめて、女の子がいれば面白いのに。
声のトーン。言葉の選び方。目線の使い方。
ちょっとしたリアクションや沈黙の間に、見え隠れする無意識の欲求。
それぞれ違う好みのタイプ、刺さる言動、地雷ワード。
そういうのを少しずつ紐解いて、演じ分けていくのが好きだ。
感情じゃなく、分析で恋愛を解体していく作業。
その子に最適な『恋愛ルート』を選んで、バッドエンドを避けつつ、最短で攻略する。
感情移入なしの効率プレイ。
俺にとって、恋愛ってそういう楽しいゲーム。
……好かれたら好かれたで、まためんどいのも事実なんだけど。
本当、なんていうか、俺って人として欠陥が多すぎて、芸能界でしか生きていけないんだなって思う。
自虐的な思考に陥りつつ、ぼんやりと遠くの街明かりを眺めていた、その時。
──ガサッ。
誰かの、衣擦れの音。
視界の端に、小さな人影が映った。
