案の定、怪訝そうに首を傾げる明頼。

「そーいや、なんか皆戸遥風と千歳くん不仲だよな今。なんかあったの?」

……なんかあった、どころじゃない。

遥風とのすれ違いが脳裏にフラッシュバックし、少し辛くなって思わず目を伏せる。

「……なんもないよ」

絞り出すようにそう答えるけれど、只事でない感が溢れていたのだろうか、一気に重苦しい空気が満ちる部屋。

そんな中。

「なんか、せつねぇ」

ぽつり、とこぼす明頼。

「片思い中の女の子から、忘れられない元彼の話聞いちゃったみたいな心境だわ……」

そう言うなり、膝を抱えて肩を震わせ始める。

「お前が泣くなよ気色悪い」
「いたっ」

雪斗に思いきりデコピンされ、額を押さえる明頼。

「……とにかく、この僕がここまで協力してやったんだから、ちゃんとハニートラップで引っ掛けてきなよ」

協力してやったというか、半ば強引に押しかけてきた陽斗がフンと鼻を鳴らして私を見下ろした。

「雪くんと、明頼のステージの出来に関わる重大な任務なんだからさ」

その口ぶりから、陽斗が同じ事務所の2人を本当に大切に思っているんだろうなと伝わってきて、心の中にちょっと暖かい感情が生まれた。

私のこれからの任務が、このグループの行く末を担ってるんだ。

正直、色々とリスクの高い作戦ではあるけれど……他のメンバーの気持ちも背負ってるんだから、完璧にやり遂げないと。

このまま何もせずに脱落なんて、死んでもごめんなんだから。