さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜

「あの……千歳くんは、今何年生っすか?」

「ん?中3」

「え!じゃあ近いっす、俺中2です!」

友だちができたことが嬉しいのだろう、照れながらもグイグイと距離を詰めてくる栄輔。適当にあしらいながら、改めて彼の容姿を分析してみる。

キラキラ輝く大きな瞳。ふんわり柔らかな茶髪。
初対面の印象が圧倒的ではないとはいえ、きちんと顔は整っている。

それもそのはず、ここは日本最高峰の芸能事務所によるオーディション会場。
周りを見渡せば、どこを見ても顔が小さくてスタイルの良いイケメンばかり。

と、そんな中でふと、カメラに撮られていることに気づく。
私はそれに応え、カメラに一番魅力的に映るような角度で、栄輔に薄く微笑みかける。

「俺、今日からの参加なんだけど。昨日は何したの」

「あっ……えっと、昨日はオリエンテーションと顔合わせみたいなもんで、撮影自体は今日からっす!」

「なるほどね、緊張する……」

「千歳くん、ビジュ最強だし絶対大丈夫っすよ!俺、千歳くんの顔目指して整形したいくらい」

「やめとけって。するならもっと丁寧にしたほうがいいよ」

声は自然体なトーンを意識。笑い方も、親友と話すように、ナチュラルに。

ファンは、完璧な容姿を持つアイドルに対しては、年相応の無邪気さというギャップも重視しがち。視聴者の需要をちゃんと計算して動かなきゃ。

そんなふうにして、私はしばらく栄輔からオーディションについて聞き出す。

このオーディション『EMERGENCE PROJECT』は、男性アイドルグループ結成のための人気番組であって、全世界に配信され多くのファンを持つシリーズ作品であるということ。

3期目である今回は、世界的なダンスコンテストへの出場経験がある実力者や、アメリカの大手レーベルで活動していた天才アーティスト、既にアイドル活動やインフルエンサーとして有名な人たちなんかも多く参加するとか。

先ほど栄輔とバチバチしていた黒髪の彼は、皆戸遥風(みなと はるか)といって、人気アイドルグループ『TRICK』のセンターを務めていたらしい。そのグループ名は、有名な音楽番組でもちらほら聞いたことがある。
圧倒的な人気メンバーだったが、気性の荒さで事務所やメンバーと揉め、脱退したのだという。

「ほんっと、実力者ばっかで嫌になりますよ。俺なんか全然パッとしない顔だし……」

自嘲気味に笑う栄輔。彼には、他の人には無い親しみやすい魅力がありそうだけどな。

そんなふうに話していたとき、急にスタジオの照明がパッと消えた。
どよめく参加者たち。

カメラが、一斉にスタジオ前方のステージに向く。
スポットライトが、ステージを照らし出した。

壇上には、一人の男性が立っている。

どうやら、本格的に収録が始まるみたい。