「……いや、だからってこうはならんやろ!!」
午後8時、夕食後。私と京の部屋に、明頼の絶叫が轟いた。
鏡の中にいる私は、女装……ではなく、男装を解いた、完全に素の状態。
髪型を変え、薄く化粧を施しただけにも関わらず、男装の時とはまったく違う女の子らしい雰囲気。
その状態で明頼を部屋に呼び、初対面のリアクションが今である。
そりゃ、そうなるよね。
だって、今の私は、どこからどう見ても女の子。それも当然、もともと女の子なんだから。
内心、本当に女だとバレないかすごくドキドキしていて、明頼の顔をまともに見るのも怖い。
「ワンチャンいけたらラッキー⭐︎みたいなノリで賛成したけど……これは危ねぇよ!これで千歳くんを外に出せねぇ!悪いけど!」
完全に取り乱した様子の明頼を前に、涼しげな顔で肩をすくめる京。
「いや、作戦は決行っしょ。せっかく可愛くしたんだからさ」
「嫌だ!榛名千歳最古参として流石に許せない!!千歳くんが傷つけられるかもしれねーだろ!!」
ドタドタと地団駄を踏む明頼。京はそんな彼を鼻で笑うと、鋭い一言を言い放つ。
「……ファンとして〜とかご高説垂れてるとこ悪いけどね、結局は千歳ちゃんが他の奴に取られるのが嫌なだけっしょ」
「は?!違いますー!!」
「ふーん、じゃあお前もし千歳ちゃんに迫られたら押し倒さない自信ある?」
京の言葉に、「うっ」と言葉に詰まる明頼。
「グループのためを思うか私欲を取るか、よく考えなね〜」
「クソが……っ」
京の無駄な煽り口調のせいで、今にも喧嘩勃発寸前の空気へ。
やっぱ京と明頼、相性悪すぎ……。
