さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


「葵ちゃんとやってないんですか?」

「うん。今日様子見に行ったら、寝っ転がってゲームしてたわ。それでこの子たち困ってんの」

わけを説明された天馬も、ちょっと苦笑して肩をすくめる。

「あいつね……オーディションの頃、ずーっと猫被ってたせいで過呼吸なったことがあって。多分、素でいる時間が無いと壊れちゃうんだと思うわ」

鷹城葵をよく知る彼らから話を聞いて、少し腑に落ちた気がした。

小学校に入る前の幼い頃から、人気子役としてテレビでの露出も多かった彼。

芸能界で成長していく過程、つまり人格形成の段階で、その性格の裏表が染み付いてしまったのだろう。

極めて早い年齢で芸能界に放り込まれた子どもが、まともに成長できるケースは多くない。

それを考えると、仕方ないことなのかもしれないという気もした。

彼にとっては、表の『アイドルキャラ』も、裏の『サボり魔問題児』も、どちらも必要不可欠なものなんだ。

だからと言って、このまま放っておくわけにもいかないけれど……。

「彼の事情は分かりました。けど今問題なのは、一体どうしたら彼のモチベーションを上げられるのかって話です」

机に頬杖をつき、つまらなそうにぽつりとこぼす京。

京って、私と違ってあんまり人に感情移入とかしなさそう。そういうところも、私と違うなって思う。

きっと、そういう性格の方が芸能界には向いているんだろうけど。

京の言葉に、顔を見合わせる棗と天馬。

「……葵は、1回でも『面白そう』って思えばやる気出すよね。飴か鞭かでいえば、飴で釣った方が100%効果的」

「そうですね」

軽く頷きつつ、天馬の視線がふとこちらに向いた。

その非現実的に美しい瞳に見下ろされ、思わずビクッと身体が硬直する。

な、なに……?