「環境なんかに言い訳せずに、決して立ち止まらずその場で最適解を模索し続けるのがプロだろうが」

参加者、スタッフ含め、陽斗の豹変ぶりに息を呑む。
カメラが寄るが、陽斗は気にせず言葉を続けた。

「お前がこのまま、何も変えようとしないままで居続けるなら……本当に俺、この番組降りるから」

人の心を突き通すかのような、鋭く冷たい視線。

参加者、スタッフ、誰もがその豹変ぶりに目を見開き、呼吸を潜めていた。

いつも可愛いキャラで塗り固めていたあの兎内陽斗が、ここまで感情を露わにするなんて。

……一体、『雪斗と一緒にデビューすること』にどれだけ強い思いが?

と、呆気に取られていたその時。

──バンッ!

スタジオの扉が、勢いよく開いた。

「ごめん、お待たせ」

立っていたのは、若宮棗。相変わらず、鷹城葵の首根っこを掴んでいる。

おそらく大目玉を食らったであろう葵の様子はというと、あまり反省していない様子。

気怠げにあくびをして、こちらを見ようともしない。

「おい葵、早く謝れ」
「『ギャラもらってる以上ちゃんと仕事はしなきゃいけない』と思いました。すみませんでしたー」

おそらく棗から言われたのであろう台詞をそのまま引用し、棒読みで頭を下げる葵。

その間延びした謝罪に、こりゃダメだと言うふうに視線を天井に投げる棗。

「カメラさん、これ使ってくださいね……コイツ一回炎上しないと懲りない」

「ごめん、ちょっと体調悪くて、練習参加できてなかったわ。迷惑かけた分きちんと取り返すね。みんなで頑張ろー!」

『炎上』という言葉を耳にした瞬間、コロリと態度を切り替える葵。

いや、絶対頑張るつもりないよ、コイツ……。