「……と、とりあえず入る?」

重苦しい沈黙を振り払うように、スタジオ外にいた棗グループのメンバーたちに声をかける。

「あっ、はい……っ!」

先頭にいた栄輔が、めちゃくちゃドギマギしながらスタジオに足を踏み入れようとする。

そのロボットのような足取りに嫌な予感を感じて、私は慌てて忠告する。

「栄輔、段差あるから気をつけ──」

「うわっ!!」

しかし、少し遅かったらしい。案の定、完璧に段差に躓いた栄輔。

──ドサッ。

気づけば、私に覆い被さるように倒れ込んできて、至近距離に栄輔の綺麗な瞳。

互いの呼吸の速度が分かるほど、近い距離。

「……っ?!」

次の瞬間、顔を真っ赤にして飛び退く栄輔。

「すっ、すんませ……」

「……うん、だから気をつけろって」

私はできるだけ平静を装って、床に打ちつけた腰を摩りつつ立ち上がる。

すると、後方から強烈な視線。

「……ずるい!ずるいずるいずるいずるーーい!!」

小山明頼だった。

「俺も事故って千歳くんとキス3秒前みたいになりたーーーい!!」
「うるっさいなぁお前!!」

雪斗に割と本気で頭を叩かれ、涙目でその場にうずくまる明頼。

うちのグループメンバー、ストレスが多すぎて前よりさらにおかしくなってる……。