スタッフさんかな、でもこんな時間に?と訝しく思いつつ、ドアを開けると。
「あ、ごめんな練習中に。俺らのグループ入っても大丈夫?」
にこ、と優しげな微笑みを携え立っていたのは、JACKPOTメンバー、若宮棗だった。
「若宮先輩……どうしたんですか?」
私が尋ねると、棗はちょっと申し訳なさげに肩をすくめる。
「いや、他のグループの完成度も確認した方がいいって、プロデューサーが。俺のグループの子も全員いるんだけど……」
そう言って、ふいと視線を後ろに移す棗。
そこには、棗のグループメンバーである冨上栄輔、兎内陽斗、新海飛龍、長谷川リアム。
……完成度を確認も何も、うちのグループ、ぐだぐだすぎてまだ1回も曲で通せてないんだけどな。
私の気まずげな表情に気づいたのか、棗がちょっと首を傾げる。
「まだ無理そ?」
「あ、いや……」
私は、ちら、と視線をスタジオの方に向ける。
そこには、ノイキャンのイヤホンをして、床に寝っ転がりゲームに勤しんでいる鷹城葵の姿。
「……」
ぴく、と顔を引き攣らせる棗。
そのまま、無言でツカツカと葵のそばに歩み寄り、イヤホンを耳から引っこ抜く。
「……げっ」
「げって何?」
「いや言ってないです」
しらこい顔をしてその場から逃げようとする葵の首根っこを掴み、笑顔で問い詰める棗。
「お前何してんの」
「……ミスったっす」
「表出ろ」
そのまま襟元を引っ掴まれてグイグイとスタジオから連行されていく葵。
そして数秒後、遠くで響く怒鳴り声。
スタジオに取り残された私たちの間に、気まずい空気が流れる。
