さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


彼にとってこの審査は、むさ苦しい空間で強制的にやらされる『面倒な仕事』のひとつでしかないのだろう。

このやる気の無さでは、技術を盗もうにも盗めない。

さらに厄介なのは、この人が審査員の役割も担ってるってこと。

だから、彼の機嫌を損ねたら、即アウト。

そのせいで、誰も強く言えずに黙り込むだけだった。

「ふわぁー、ねっむ。部屋で寝てきてい?」

「ダメです」

「ありがとー」

完全に会話になってない。

こちらの制止を華麗にスルーし、あくび混じりにスタジオを去っていく葵。

取り残された私たちの間に、重い静寂が落ちる。

それを破ったのは、峰間京だった。

「……なめくさってね?」

お前が言うなって感じだけど、それに関しては完全同意。

「せっかく連続で千歳くんと同じグループで運命だと思ったのに……こんなクソ試練が待ってたなんてさぁ……」

そう吐き捨てるように呟き、膝を抱え撃沈する明頼。

隣の雪斗も、疲れ果てた顔。

「……とりあえず、俺たちだけでも練習進めよう」

「がんばるね〜千歳ちゃん。俺もう結構やる気ないよ?」

「お前さっきから思ってたんだけど千歳『ちゃん』ってなんだ『ちゃん』って。付き合ってんのか?!」

葵にぶつけられないイライラを発散する勢いで、京に怒鳴り始める明頼。私は慌てて仲介に入る。

「男同士で付き合ってるわけないでしょ」

「まあまあ、そんな隠さなくていいじゃんって♡」

「やめて」

ダル絡みの止まらない京、すぐ頭に血が上る明頼、自由人すぎる葵。

唯一、常識人の雪斗がいてくれたことが救いだけど……。

「千歳……胃薬持ってねぇ?」

この人も、既にかなり限界そうだ。

このグループ、本当に大丈夫なんだろうか……。