光の角度によって、深い青色にも見える──まるでシルクを思わせる、艶やかな黒髪。
紺色に白いラインの入ったオーバーサイズのカーディガンが華奢な肩にふわりと落ち、胸元には、無機質な銀のチェーンネックレス。
まるでビー玉のように透き通った雰囲気を纏う美しい顔立ちの少年が、ゆるく笑った。
「改めましてこんにちは、鷹城葵です。ここのグループ、みんなカッコ良すぎて自信無くすなぁ……」
そう言って少し困ったように笑う彼は、まさに360度、どこから見ても完璧なアイドルそのもの。
カメラが回っているうちは、頭のてっぺんから爪先まで、すべての神経を『魅せる』ことに使っているのだろう。
──そう、『カメラが回っているうちは』。
「……今、撮ってない? おっけー」
その一言を皮切りに、彼の空気が一変した。
「っつか、表情筋つりそ。キツ……何が楽しくて、こんなむさ苦しい男ばっかの空間で生活しなきゃいけないわけ。女のコ連れてきてよ、ほんと」
先ほどまでの『アイドル』の仮面をかなぐり捨て、ぐしゃっと気怠げに髪をかき上げてため息を吐く葵。
その衝撃的な切り替えを前に、流石に呆気に取られる参加者たち。
けれど、カメラマンたちは微動だにせず、むしろ表情ひとつ変えずに機材の設定に集中していた。
どうやら、これは……日常茶飯事らしい。
頭の処理が追いつかず、つい隣の京に目を向ける。
そして、彼もこちらを見返して──同時に、口を開いた。
「「……あれ、お前?」」
見事にハモった。
「いや、よく聞いてよ。むさ苦しいの嫌とか、女連れてこいとか、言ってることほぼ京でしょ」
「は、あのひっどい猫被りようは完全に千歳ちゃんの専売特許」
コソコソと、声を潜めての応酬。
「大先輩様に向かって失礼を承知ですがぁ、喧嘩を売ってるんですかぁ?こちとら人生懸けてるのですけど?」
「抑えろ明頼、この人一応審査員でもあるから……!」
その横で、暴走しかける明頼を必死に抑える雪斗。
葵本人は知らんふりで、ふわぁと大きなあくびをひとつするだけ。
まずい。
このままじゃ、沈没船一直線だ。
少しでも前に進めないと──そう思って、私は慌てて口を開く。
「とりあえず、さっさと曲だけ決めません?コンセプトとか、何か意見ある人?」
悪い空気を断ち切るように、軽く手を叩く。
葵だって、態度こそ悪いけれど、流石に仕事となればちゃんとしてくれるはず。
……って、そう思っていたのに。
「曲は『アンバーグラス』。最近俺がハマってるから。以上」
空気が、ぴしりと固まる。
「「「えっ」」」
鷹城葵の独断によって、たった一秒で曲が確定してしまった。
「いや、その……他の案とか、比べて──」
「俺、これしかやる気出ないもーん」
あっさり切り捨てられる。
完全に、議論をする気ゼロだ。
