さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


巫静琉の説明を軽く聞き流しながら、残りの二人を観察する。

鷹城葵。

白く透き通るような肌が、ステージのライトを受けて儚げに輝く。

淡く霞むような透明感と、ガラス細工のように澄み切った瞳。

少年らしさの残る整った顔立ちに、薄く余裕のある微笑みが浮かんでいる。

そして、白藤天馬。

こちらもまた、二次元の世界から抜け出してきたかのような完璧なビジュアル。

彫刻のように整った美貌に、アンニュイに影を落とす長めの前髪。甘やかに孤を描く唇と、圧倒的な強者のオーラ。

感心しつつ、その面影にどこか既視感を覚えた。けれど、その正体が何かまでは思い浮かばない。

もやもやする。記憶の糸を手繰り寄せつつ、じっと彼の顔を観察していると。

彼の視線が、不意にこちらに向けられた。

心臓がドキッと跳ね上がる。
見過ぎたか。

私は慌てて視線を逸らす。
目が合うだけで、息が止まるような破壊力。

あまりジロジロと見るのはやめよう。既視感の正体は、きっといずれ分かるだろうし。

「では、これからチーム分けを発表します」

静琉のその言葉に、場内は一気に緊張の糸を張り詰めたようになる。

照明が一段階落ち、鮮やかなエフェクトと共に切り替わるステージ奥のスクリーン。

ずらり、と参加者たちのグループ分けが表示された。


①『白藤天馬』チーム
天鷲翔 / 皆戸遥風 / 花松奏 / 室本善太郎

②『鷹城葵』チーム
峰間京 / 榛名千歳 / 兎内雪斗 / 小山明頼

③『若宮棗』チーム
冨上栄輔 / 兎内陽斗 / 新海飛龍 / 長谷川リアム

④『小黒礼於』チーム
椎木篤彦 / 灰掛遼次 / 扇田薫 / 藤田恵杜


私の名前は、鷹城葵のチームにあった。

思わず、顔をしかめる。

鷹城葵は、グループの中で白藤天馬と並んで、特に人気の高いメンバー。

純粋なスキル面では天馬に及ばないものの、圧倒的な表現力の持ち主で、放送時、SNSでは『神の申し子』だの『アイドル界の奇跡』だの散々持て囃されていたという。

比べられるのは確実。そして、見劣りするのも確実。
しかも、儚げで中性的な容姿……私と若干キャラ被りしているのも気になる。

『榛名千歳って、鷹城葵の劣化版じゃない?』

──そんな言葉がネットに流れる未来が、目に浮かぶ。

焦燥感に焼かれ、内心頭を抱えていると。

不意に、どこからか視線を感じた。

顔を上げると、膝に頬杖をついてじっとこちらを見てくる峰間京。

目が合った途端、ふっと口元だけで笑い、そして『よろしく♡』とでも言うように軽やかにウインクまで飛ばしてくる。

……この人、本当にどんな時でも余裕を崩さないな。

一瞬呆れかけて、思い直す。

そうだ、峰間京もまた、これまでの審査を危なげなく上位で走り抜けてきた逸材。

私よりも余裕があるのなんて、当然だ。

私がここで立ち尽くしている間にも、上位ランカーたちは一歩も二歩も先を走ってる。

なら──私は、喰らいつくしかない。

嘆いてる暇があるなら、必死に練習して、技術を盗んで、生き残らなきゃ。

深く、息を吸う。

全身を駆け巡る緊張を、ゆっくりと鎮めるように。

そしてスクリーンの下、巫静琉の言葉が力強く響いた。

「それでは──EMERGENCE PROJECT Season3 三次審査、開幕です」