巫静琉からコメントを促され、マイクを手に取ったのはリーダーの小黒礼於だった。
鋭く切れ長の目が、冷たい光を携え会場を見渡す。その威厳を前に、参加者たちの背筋が自然と伸びる。
「『JACKPOT』リーダー、小黒です。まずは皆さん、これまでの審査お疲れ様です」
エマプロ2期に出演していた頃、彼は高校生だったけれど、その年齢不相応な落ち着きと威厳があった。
デビューして5年が経った今、そのオーラがさらに磨かれ、研ぎ澄まされたナイフのような印象を纏うまでになった。
微笑みは決して携えない冷たさ、その言葉ひとつひとつの重みが、参加者たちの心に強くのしかかる。
「僕が皆さんにまず伝えたいのは、この業界で生き残るということは、皆さんが今想像している以上に、遥かに過酷で苛烈だということ。そして、その過程では、時に手段を選ばずに這い上がる──そんな狡猾さや戦略的なしたたかさも必要になってきます」
淡々とした口調。
けれど、その裏には彼のこれまでの過酷な経験と血の滲むような努力が見え隠れする。
「『JACKPOT』のメンバーは、共演者であると同時に審査員という立場も担っています。皆さんのスキルや日々の様子を総合的に評価し、番組制作側にフィードバックを行います。つまり、審査日だけでなく、日々の練習や立ち居振る舞いすべてが審査対象になるということです。常に自分が見られている意識を持ち、一瞬一瞬を無駄にすることなく、全力で取り組むようにしてください」
礼於は厳しい声音でそう締めくくると、隣の若宮棗にマイクを手渡した。
「こんにちは、若宮棗です。自分の人生を変えてくれたこのオーディションに、このような形でまた参加できてとても感慨深いです」
無難なコメントだが、喋るだけでその空間を支配するような甘美な声音、視線遣い、微笑。
「大変だったでしょ、ここまで来るの。ね。俺も分かりますよ。実際歌いましたもん、ここで」
甘く微笑むその姿と、恋人に語りかけるようなゆったりと落ち着いた語り口調。
彼がSNS上で『リアコ製造機』と呼ばれている理由が分かる、どこかドキッとしてしまう距離の近さ。
「僕たちは審査員としての役割もありますが、それ以上に、皆さんと一緒に最高のパフォーマンスをつくることを楽しみにしています。これから1ヶ月間、よろしくお願いしますね」
こうして、グループの年上組2人がコメントし終えると、マイクは巫静琉に戻った。
あ、年下の2人は喋らないのか。
