薄いガラスみたいに張り詰める空気の中、照明が落ち、ゆらり、と長身のシルエットが浮かび上がる。
巫静琉だ。
「今日から、EMERGENCE PROJECT Season3 三次審査が始まります」
冷酷な鋭さと、全てを見透かすかのような洞察を併せ持つ視線。その威厳のある佇まいに、会場の緊張が一際高まる。
「今日は、その審査内容の説明をしに来ました。今回の審査は、今までのエマプロにはなかった、ユニークな形式で行います」
やはり、今回の三次審査も特殊な形で行われるらしい。
どよめく会場。静琉の瞳からはなんの感情も読み取れない。一体、何を仕掛けてくるのか。
固唾を飲んで次の言葉を待つ。
「えー、既に一部報道で匂わせがありましたが……今回は、特別ゲストを招いています」
その言葉に、参加者たちが大きくざわめいた。
「マジ?!」
「ホントに来んの?!」
『報道での匂わせ』を知っている様子の参加者たちが、興奮したように囁き合っている。
色々ありすぎて、ゲストの匂わせなんて確認していなかった……一体、誰が?
ざわつく会場の空気を一変させるように、突如、スクリーンにノイズが走る。
眩しいライト、鳴り響くイントロ。鋭い閃光と共に、映し出された名前は──
【JACKPOT】
エマプロ2期で誕生した、超実力派の人気アイドルグループ。
誰もが一度は目にしたことのある、伝説的な4人組が、舞台袖から颯爽と現れた。
瞬間、熱狂に包まれる会場。まるで目の前で花火が打ち上がったかのような、鮮烈な印象。思わず息を呑む。
先頭には、白藤天馬。
色素の薄い茶髪、儚げな印象とは裏腹に鋭い眼光。
人を惹きつけずにはいられない圧倒的なカリスマ。
オーディションの初登場から全審査で1位を独走した、エマプロ2期の『顔』にして絶対的エース。
続くのは、鷹城葵。
日に当たると紺色にも見える艶やかな黒髪、隙のない完璧な微笑。グループ最年少ながら、圧倒的な表現力を持つ『天才』。
もともと子役出身であり、その演技力と清純派なルックスから人気俳優としても活躍する美少年。
彼は確か、最終2位でデビューしていた。
続くのは、若宮棗。
ウェーブがかった黒髪、高級芸術品のような気品溢れる顔立ち。余裕たっぷりの微笑みが、空気を変える。
その圧倒的なカリスマ性で、人気モデルとしても活躍する彼。
『歩く18禁』と言われるほどの色気と圧倒的な表現力を持つ最年長メンバーだ。
最後尾を担うのは、小黒礼於。
切れ長の目、鍛え抜かれた身体、無表情で落ち着いた印象の彼。
グループ1のダンススキルを持ち、世界的なダンスコンテストでの優勝経験もある超実力者。
ストリート出身で、孤高な雰囲気を持つ。
誰もが、他のグループであれば確実にセンター候補の、規格外のグループ。
──そんな『JACKPOT』が、目の前にいる。
デビューして5年、トップチャートを走り続ける『本物のアイドル』が、完全体で。
