収録スタジオに着くと、当然だけれど、参加者たちの数はさらに減っていた。
次々と人数が振るい落とされていくのを見ると、やはりこのオーディションのシビアさを痛感させられる。
参加者たちの話し声や笑い声の裏に滲む、張り詰めた緊張感を肌で感じながら、私は自分の席へ向かう。
と、その時。
視界の端に、見慣れた横顔が映った。
──遥風。
ふわ、と爽やかな、いつもの彼の香りが微かに鼻を掠める。
一瞬、いつものように呼び止めそうになって、慌てて抑えた。
遥風と私の関係は、もう今までとは違うんだ。
ほんの数センチのすれ違いなはずなのに、それがやたらと遠く感じて。
遥風は、私を見もしないまま、まっすぐ前を向いて歩いて行った。
……当然のことだ。
自分から突き放したくせに、まるで被害者かのように胸を傷ませている自分が嫌になる。
気を紛らわすように、私はスマホの暗い画面を顔の前に持ち上げた。
今は、撮影に集中しよう。
カメラに最善の状態で映れるように、前髪を整えていると。
「……あいつとすれ違った途端にビジュ確認は、流石におもろすぎ」
「っ?!」
耳元に不意に差し込まれた声に、びくりと肩が跳ねた。
振り向くと、そこに立っていたのは峰間京。
口元を隠して、楽しそうに笑ってる。
その性格の悪さ、健在。
「いや、違っ……」
茶化すような彼の態度に苛立って、思わず言い返そうとするけれど──
結局、何も言えなかった。
だって、彼の言ってること、間違ってない。
今の私は、側から見れば本当に滑稽に映るんだろう。
自分から彼を傷つけ、突き放したのに、いざ関係が切れると普通に落ち込むなんて。
「恋愛相談乗ってあげたいけど、今夜は無理かな〜。抜け出して女の子と営む予定なんで♡」
「きったな」
「辛辣」
思わずドン引きの視線を向けるけど、どこ吹く風といった調子で楽しそうに笑う京。
こういう下ネタへの異様な耐性からも、私の育ってきた環境との違いが大いに窺える。
一見危なっかしいけど……この人、某四股インフルエンサーと違って要領良さそうなとこある。
多分、デビューまで上手くやるんだろうな。
「千歳ちゃんが代わりに相手してくれるんならいいけどね」
「しません」
「よっしゃ、ありがと〜♡」
「話聞いて?」
この人、私を揶揄うのが生き甲斐なのかなってくらいに楽しそう。
けらけら笑う京を横目で恨めしげに睨んでいた、その時。
「おはよう、千歳くん」
背後からトン、と軽く肩を叩かれた。
