さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



掲げていたグラスを、テーブルの上にコト、と置く。


「……そっちだって余計に絡んでた」

「あら」


僅かに眉を上げる篤彦。


「人聞きの悪い。可愛がってただけやのに」

「どうだか」


翔は短く吐き捨て、窓の外へ視線を流した。

厚いガラスの向こうで、夜露が街灯を反射する。通りを一台の車が横切り、白いライトがさあっと店内の壁を撫でて消えた。


「……まあ、最初から破綻してたんですよ」


窓の外を見つめながら、ぽつり、と小さく落とす。


「俺はそれをちょっと刺激しただけ」


前髪の陰に隠れたその瞳からは、何を考えているのかまるで読み取れなかった。

カラ、と再び氷の音が鳴る。篤彦がグラスを持ち上げたのだ。


「まあな」


低くどうでも良さそうに言って、琥珀色の液体を喉に流し込む篤彦。

唇から離しても、すぐにテーブルに戻すことはせずに、グラスの中でじわじわと角を失っていく氷を見つめる。


「……こんなことで壊れるなら、さっさと壊れたらええ」


グラスがテーブルに置かれ、コト、と乾いた音を立てる。