さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



切れた唇の端から、じわりと滲む赤い血。口の中に、ぬるい鉄の味が広がっていく。


栄輔は、黙ったままの俺の態度に苛立ったように、再度詰め寄ると──


その服の胸元を両手で鷲掴みにし、ガッ!と壁際に押し上げる。



「……千歳ちゃんはいつだって、お前のこと庇うよ」



低く、震えを堪えるような声で。



「そういう子じゃん。なぁ。お前が一番知ってんだろ……!!」



泣きそうになりながら、まっすぐにぶつける。


ぎゅう、と心臓が捻り潰されるみたいだった。



知ってる。

知ってるよ、そんなこと。

嫌になるくらい。


勝手にいろんなもの一人で背負って、ぐちゃぐちゃになるような奴だって。

いつもいつも、誰かのため、誰かのため、ってまぶしく光って、自分が焼き切れそうになってる危ない奴だって。



「……」



何か言い返そうとして、口を開く。


けれど、いまさら俺が何を言ったところで、そんな千歳を壊したのはお前なんだって、刃が自分に返ってくるから。


結局諦めて、静かに睫毛を伏せる。