さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



深夜。

コンコン、と部屋の扉がノックされる音がした。


肩が、びく、と微かに跳ねる。


反射的に脳裏に浮かんだのは、ただ一人。今、世界で一番会うのが怖くて──

世界で一番、愛おしい人の顔。


千歳。


淡い期待と、身がすくむような恐怖で、鼓動が跳ねる。


これ以上話すのが怖かった。責められるのが怖かった。


変に期待して傷つくのも、傷つけられるのも怖くて、さっきもつい無視してしまったけど──

もし本当に千歳だったら、今度こそ、ちゃんと話さないと。


悪いのは俺なんだから。


昨日のことも、昼間のことも、さっきのことも、ちゃんと、全部──



「開けろよ」



聞こえてきたのは、幼馴染の、怒りを押し殺したような声だった。



一瞬目を見開いて──


ふ、と張り詰めた息を吐く。



……なんだ、栄輔か、と。

心の中に滲んだ気持ちが安堵なのか、それとも他の何かなのかは、俺にも分からなかった。


ゆっくりとドアに歩み寄り、ガチャ、とドアノブを回す。


「……なに」


向こう側に立っていたのは、栄輔ひとり。


パーカーのポケットに手を入れたまま、前髪の奥からこちらをじっと睨み上げていた。



その表情に、ほんの少し嫌な予感がした──次の瞬間。