「…………」
静かなコモンルームに響いたその音を聞きながら、私は動けずに立ち尽くす。
…………行っちゃっ、た。
さっきまで彼が座っていたソファと、床に伸びる自分の影だけが、視界に残されている。
そっ、か。
そっか、そっか。
もう遥風は、私に愛想を尽かしちゃったんだ。
……や、でも、うん。
当然だよね。
無茶な要求をして、散々傷つけて。
彼の頑張りに気づくこともできずに、感謝すら伝えられなくて。
助けてくれた手だって、あんなふうに、説明もなく振り払って──
こんな奴と、今さら何を話したいなんて思うんだろう。
「…………っ」
急に、視界がぐらりと揺れた。
目の前が暗くなり、立っていられなくなって、その場にゆっくりとしゃがみ込む。
冷たい床に手をつけば、堪えていた涙がじわ、と滲んで、視界がぼやけた。
「……遥風、」
静けさの中、届くわけがないのに呼んでみる。
その瞬間、これまでの出来事が、走馬灯みたいにぶわっと蘇ってきた。
