部屋の奥、薄暗い間接照明の下で、ソファに腰掛ける人影が一つ。
その見慣れた横顔は、遥風のものだった。
足を組んで、肘掛けに頬杖をついたまま、片手でスマホを眺めている。
目元には柔らかい前髪が落ちていて、画面から漏れる白い光が、伏せられた横顔を淡く照らしていた。
心臓が、ドクン、と大きく跳ねる。
私が入ってきたことに気づいてないのだろうか、一瞥どころか、顔を上げる素振りすら見せない遥風。
その冷たい雰囲気に、思わず足がすくんだ。
……このまま何も言わず部屋に戻ろうか?
何も今、この状態で話すこともない。日本に帰ってから、お互いに落ち着いた時にちゃんと話せれば。
と、そんなことを思いかけた私だったけれど。
でも……
日本に帰って、本当に話せる?
そうやって先延ばししていくうちに、気まずさが確定してしまって、さらにハードルが上がって──
もう二度と、前までみたいに話せなくなってしまうんじゃないか。
このタイミングを逃してしまったら、一生このままで終わってしまうような気がしてしまって。
「…………っ、」
心臓が、どくどくとうるさく高鳴る。
喉が引き攣って、上手く息が吸えない。
けれど私はその感覚を無理やり押し殺して、口を開いた。
「遥風、」
