そのままの流れで、榛名千歳が前に進み出る。ここは、千歳と遼次がペアになるパート。
千歳の甘く中性的な歌声に、遼次のハスキーボイスのラップパートが重なる。
遼次の迫力は言わずもがなだが──榛名千歳、彼も凄まじい。
疲れたような、影のある美貌。一次審査での可愛らしい彼からは想像もできないほどに鋭い眼光。
真顔で脳天をぶち抜いてきそうな冷酷さ、非情さを完璧に演じてしまうその表現力。
……今回の推しは、榛名千歳かな。
と、そんなふうに思っていたところでサビへ。
8人が三角形のフォーメーションを形成する。
その頂点に立つのは──皆戸遥風。
暗転。
中央を切り裂くスポットライト。
ハットを目深に被り、表情は読めない。
だが、その唇の端が意味深に持ち上がり──
すっ、と帽子の鍔に指を添える。
『It's your show』
次の瞬間、勢いよく宙を舞うハット。
華麗に、爽快に投げ捨てるその仕草が、まるで己を覆っていた何かを取り去ったかのようで──。
露わになった双眸。
その光の無い目を見た瞬間、ドクン、と全身が脈打つような感覚。
そして次の瞬間、奔流のように押し寄せる凄まじい声量のボーカル。
全身を、ビリビリと駆け巡る衝撃。
『英雄じゃない 予定調和のキャストでもないさ
Just the shadow your spotlight skipped』
──まっ、待って待って待って待って。
君、そんな声出せなかったでしょうが。
混乱する俺を、彼の静かな瞳が射竦める。
長いまつ毛に縁取られた、冷徹に凍った瞳。美しく冷たい光。
裏切りを受け入れ、愛を捨て去り、この世界で生き抜く覚悟。
表舞台に立てない存在が、裏から全てをひっくり返すという破壊的な美学。
この楽曲のコンセプトを、これ以上ないほど完璧に体現している。
一体、俺が見ていない間に何があった?
磨き抜かれたスキルに、剥き出しの感情が宿る。
その最高に恵まれた容姿に、激情が奔る。
それだけで、ここまで変わるのか。
遥風のパートが終わり、センターから退いても、彼から目を離せない。
