私は、とりあえずダメになった衣装を回収して自室に戻った。
部屋に入ると、京は既に布団をかぶって眠りについている様子。
スマホのライトで照らして、栄輔の衣装を観察してみる。
衣装はおそらく、王道の王子様スタイルを意識した、肩飾りのついた深紅の軍服風ジャケット。
昼のステージリハーサルで着ている姿を見た。
それにしても、修繕する余地もないほどグチャグチャな状態だ。これは、新しい衣装を調達するしかない。
けれど、私なんかがどうやって。
ぐるぐると思考を総動員し、何か助けになりそうな記憶がないか探る。
すると。
『困ったら連絡してね♡』
懐かしい声が、脳裏に蘇った。
潮田涼介さん。私の男装に協力してくれた、カリスマスタイリスト。
彼のサロンを訪れ、男装させられた際、私は彼の衣装部屋に足を踏み入れた。
その時、私は確か──
『煌びやかな王子様スタイルのステージ衣装、シンプルなレッスンウェア、スタイリッシュな私服まで、色とりどりの服たち』
を、目にしたような。
王子様スタイルの、ステージ衣装。
私の記憶の中のそれは、きっと、セレナーデの王子様コンセプトに違和感なくマッチするはず。
私は慌てて、ガサゴソと荷物を漁る。
確か、財布の中に彼の連絡先が書かれた紙を入れておいたはず。
──あった。
私は、財布のお札を入れるポケットから一枚のメモ紙を取り出した。
ご丁寧に、涼介さんのサインまで添えられている。間違いない。
こんな時間にかけるのは非常識かもしれないけど──背に腹は変えられない。
私はワイヤレスイヤホンをつけると、メモ紙の電話番号を入力して、電話をかける。
3コール目で、涼介さんが出た。
『はい、潮田です♡』
「涼介さん、こんな時間にすみません。榛名千歳ですが」
『あら〜千歳ちゃん?いいのよいいのよ、どうしたの♡』
深夜であるにも関わらず、前に会った時と同じテンション。ちょっと感心しつつ、私はわけを話す。
「明日オーディションの二次審査本番なんですが、少し事情があって友達の衣装がダメになってしまって。番組側にバレる前に代わりのものが欲しいんです」
『ほう……訳ありなのね?』
涼介さんはそれ以上は深く突っ込まずに、衣装の詳細を聞いてくれる。
説明すると、彼の衣装部屋に似たようなものがあるとのことだった。
栄輔の写真を送れば、体型と身長を分析して大体合うように仕立て直してくれるという。
……仕立てもできるの?この人、本当になんでもありだな。
そのスキルの幅広さに感心しつつ、私はお礼を言う。
これで、衣装問題はなんとかなる──と、思われたが。
